携帯デバイスの所有状態の連続監視

 
 

携帯デバイスの所有状態の連続監視(2007-)

メンバ:金春善(2007-2009)

    河内智志(2010-2012)

    薛媛(2010-)

    太田和也(2012)


















本研究では,携帯デバイスが身体上のどこにあるか(胸ポケット,ズボン前ポケット等)を判定する技術を開発しています.本技術により,携帯電話の着信通知を格納場所に応じて媒体(メロディ,振動等)やレベルを適切なものに変更することができます.また,センサの常時帯同により,個人や組織・社会の状態を自然に把握できますが,様々な理由により帯同場所は変わるため,正しい計測が行われないことがあります.このため,帯同場所に応じて利用者に修正を促したり,補正を施したり,場合によっては無駄な電力消費を抑えるために動作を停止することも必要になります.


格納場所判定にあたっては,歩行中にデバイスに加わる加速度パターンを元に判定しています.またこれだけでは, 座っているときに胸ポケットからズボンのポケットに移し替えても,次に立ち上がって動き出すまで場所の変更は認識されないといったことを意味しており,状態監視としては不十分です.現実的にはユーザの身体状態は,座っているか立っているかという,あまり動きがない状態が大半数を占めていると考えられます. このため,場所を変更する動作をジェスチャと捉え,場所ごとに異なるジェスチャパターンの認識により移し替え先を認識することを試みています.以上より, 本研究では携帯電話の所有状態監視の範囲を,ユーザが動いている状態とそうでない状態を含めることで,帯同場所の監視を継続的に行うシステムを実現しています.なお,対象とする場所は,ズボンの前後ポケット,ジャケットおよび胸ポケット,首(ストラップ),カバンの6箇所です.


最初の着信通知の例とともに,格納場所情報を本来必要な情報を説明するメタデータとして利用することで,実世界で有用な情報伝達を行ったり,計測を行う際の重要な課題に取り組んでいます.特に現在は,携帯型熱中症およびインフルエンザ警告計の警告に説得力を増すための応用と行動認識の分類器を格納場所ごとに最適化する研究に取り組んでいます.


また格納場所情報を他の多くのアプリケーションで共有するためのソフトウェア基盤開発の開発にも取り組んでおり,Androidスマートフォン上に「場所判定サービス」として実装すると共にこれを利用するためのライブラリ
を開発しています.


右図は本機能の位置づけを表しています.センサからのデータや着信などのイベントには,本機能により得られた帯同場所情報がメタ情報として付加され,アプリケーション機能に渡されます.アプリケーション機能側では,そのメタ情報を元に上で述べたような適切な処理を行います.


本研究は,科学技術振興調整費「若手研究者の自立的研究環境整備促進事業」および文部科学省特別教育研究費共生情報工学研究推進経費,栢森情報科学振興財団,科研費(A)の支援を受けています.



本研究は以下で発表しています.

  1. 箇条書き項目太田和也,岩﨑正裕,藤波香織;“携帯端末を用いた行動認識における端末格納場所情報を用いた認識パラメータ構成法に関する一検討”, マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム (DICOMO2013),pp. 641-646, 2013年7月10日.

  2. 箇条書き項目藤波香織;“携帯機器の帯同場所のセンシング−このデータはどこから来たのか?−”,情報処理,Vol. 54, No. 6, pp. 20-23, 2013年6月.

  3. 箇条書き項目河内智志,藤波香織;“携帯電話の格納場所連続監視手法〜歩行時および格納動作時判定処理の文脈的併用〜”,情報処理学会ユビキタスコンピューティングシステム研究会 第37回研究発表会(UBI37),2013年3月14日.

  4. 箇条書き項目(学生奨励賞/情報処理学会推奨修士論文)河内智志,藤波香織;“携帯電話の連続的な格納場所判定のための格納動作時および歩行中の判定処理併用手法” 第75回情報処理学会全国大会,4V-5,2013年3月7日.

  5. 箇条書き項目【最優秀賞】河内智志,太田和也,藤波香織;歩行および格納場所変更動作の加速度を利用したセンサ内蔵携帯電話の格納場所連続判定手法”,人間活動センシングコンソーシアム HASC Challenge 2012 シンポジウム,2012年12月25日.

  6. 箇条書き項目Kaori Fujinami and Satoshi Kouchi; “Recognizing a Mobile Phone's Storing Position as a Context of a Device and a User”, In Proc. of the 9th International Conference on Mobile and Ubiquitous Systems: Computing, Networking and Services (MobiQuitous2012), Beijing, China, 12 December 2012.

  7. 箇条書き項目Kaori Fujinami, Satoshi Kouchi, and Yuan Xue; “Design and Implementation of an On-body Placement-aware Smartphone”, To appear in International Workshop on Sensing, Networking, and Computing with Smart Phones (PhoneCom 2012) in conjunction with IEEE ICDCS 2012, June 2012.

  8. 箇条書き項目藤波香織;“デバイスの身体上での格納場所の特定について”,電子情報通信学会 ヒューマンプローブ研究会 第7回発表会,2012年6月5日.

  9. 箇条書き項目河内智志,藤波香織;“携帯電話の格納場所の判定 ~鞄への格納状態の認識~”, 第74回情報処理学会全国大会,2012年3月.

  10. 箇条書き項目河内智志,薛媛,藤波香織;“携帯電話の格納場所判定機能のAndroid携帯上への実装”, 第73回情報処理学会全国大会,2011年3月.

  11. 箇条書き項目河内智志,薛媛,藤波香織;携帯端末の身体上格納場所判定機能のスマートフォンへの実装”,インタラクション2011,2011年3月11日.

  12. 箇条書き項目薛媛,藤波香織;“高信頼な携帯型熱中症警告器のための基礎検討”,富山県立大・早大・慶大・農工大4研究室合同ワークショップ2010年11月.

  13. 箇条書き項目Kaori Fujinami, Chunshan Jin, and Satoshi Kouchi; “Tracking On-body Location of a Mobile Phone”, Late Breaking Results – Cutting Edge Technologies on Wearable Computing, The 14th Annual IEEE International Symposium on Wearable Computers (ISWC’10), October 2010.

  14. 箇条書き項目藤波香織;“知的なセンサによるアプリケーション機能保証のための枠組み開発”,第4回共生情報工学シンポジウム,東京農工大学 共生情報工学プロジェクト,2010年1月12日

  15. 箇条書き項目藤波香織:品質データとしての身体装着型センサの格納場所判定ーデータの出所を保証し,高信頼な計測が可能−,JST Innovation Bridge2009年11月.

  16. 箇条書き項目金春善,藤波香織;“格納動作パターンを用いた携帯電話の所有場所判定”,情報処理学会ユビキタスコンピューティングシステム研究会第21回発表会,情報処理学会研究報告 2009-UBI-21, pp. 23-30, 2009年3月4日.

  17. 箇条書き項目藤波香織,金春善;”知的なセンサによるアプリケーション機能保証のための枠組み”,東京農工大学科学技術展2008,2008年11月6-8日

  18. 箇条書き項目藤波香織;“身体装着型センサによる行動認識に拡張性と信頼性をもたらす基盤システムに関する研究”,第2回共生情報工学シンポジウム,東京農工大学 共生情報工学プロジェクト,2008年2月29日

  19. 箇条書き項目金春善,藤波香織;継続的な携帯電話の所有状態認識システム”,インタラクション2008(ポスター),2008年3月

  20. 箇条書き項目金春善,藤波香織;携帯デバイスの帯同状態の連続監視に関する一検討”,第70回情報処理学会全国大会,2008年3月