単調作業に対する意欲増進に関する研究
単調作業に対する意欲増進に関する研究
ClassifyingBox(2009.4〜2011.3)
メンバ:川上賢太
産業革命以後,労働の単純化が行われるようになり,単調反復労働が増加しました.これにより作業の単調さから作業意欲の低下が発生し,能率の低下や作業ミスが発生するようになったといわれています.そこで本プロジェクトでは,単調作業に対して適切な情報提示を行うことで,従来は単調であった作業の意欲改善,作業負荷の低減や能率低下の防止を目指しています.つまり,「夢中になっているうちに作業が終わった」と感じられるような情報提示方法を明らかにすることを目指しています.
代表的な単調作業として,郵便物の仕分け作業を対象とした図1に見られるようなプロトタイプシステムを開発しました.まず,作業者が「仕分け棚」に対して郵便物の仕分け作業を行い,これを仕分け棚が持つセンシング機能によって作業状況を取得します.この作業状況を作業者にフィードバックすることによって作業者の飽きを防ぎ意欲を改善することを狙っています.
仕分け棚は図2のように,16個に収納場所が仕切られた棚になっています.そして,図3で示すようにそれぞれの棚にはアルミ箔とL型金具が取り付けられており,ハガキを仕分けして棚を開いた際にこの接触(赤い丸で囲った部分)が離れるようになっています.つまりスイッチになっており,開閉状況を適切なインタフェースを介して(本研究ではPhidgets社のインタフェースキット)により取得することで作業状況を知ることができます.
表示する情報は,作業者に仕事の社会上の意義を強調する内容としています.すなわち,図4のように街を実際の区画のように分け,それぞれの区画は仕分けが進むにつれて発展していきます.具体的には,犬小屋が普通の住宅になり,最終的にビルやお城になります.単調さを無くすために,作業能率が落ちてきたころを見計らい臨時イベントを発生させて,作業者に意外な情報を提示するようになっています.
本研究は以下で発表しました.
川上賢太,周遵清,藤波香織;“応援・目標・意義を利用した単調作業の質向上のためのインタフェース”,情報処理学会 第57回モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)・第29回ユビキタスコンピューティング(UBI)合同研究発表会,2011年3月.
(学生奨励賞)川上賢太,藤波香織;“単調作業の総合的支援システムによる労働の質的向上の研究”,第73回情報処理学会全国大会,2011年3月.
川上賢太,藤波香織;“単調作業の総合的支援システムの検討〜速く楽しく正確に〜”,富山県立大・早大・慶大・農工大4研究室合同ワークショップ,2010年11月.
川上賢太,藤波香織;“覚醒水準を利用した単調な仕分け作業の飽きの防止”,情報処理学会第72回全国大会,pp. 4-571~572,2010年3月.
図1 システム構成
図2 仕分け棚の外観
図3 アルミ箔を用いた開閉センサ
図4 ディスプレイに表示される街の状態