ハイブリッド化による澱粉のマルチ改変


 タンパク質と糖を結合させることによるマルチ改変には、タンパク質の機能を改変するということ以外に、もう1つの側面があります。それは、見方を変えると、多糖にタンパク質が結合していることと同じであるので、タンパク質だけでなく、多糖の特性を改変できることです。例えば、酸性多糖の場合は、カルシウム等の2価イオンによって分子凝集して混濁を生じ、溶液安定性は低下しますが、ハイブリッド化によって改善できます。塩基性多糖であるキトサンは、アルカリ性で不溶となりますが、ハイブリッド化で顕著に改善できます。これらのことは、多糖の機能改変に、本ハイブリッド構想が有効であることを示すものです。

 そこで、次にその 一例として、澱粉の場合について以下に示します。
 澱粉は、食品中の代表的な多糖であり、食品素材として幅広く利用されています。しかし、多様化する要求に応えるため、新規の素材の開発が望まれます。そこで、我々は、澱粉粒にタンパク質を結合した、新規なタンパク質結合澱粉粒ハイブリッドを調製し、タンパク質の性質を澱粉に付与すること、澱粉の持っている固有の性質(糊化特性、ゲル化特性など)を改変することを試みています。
 これまでに、乳清タンパク質とのハイブリッド化により、溶解度・膨潤度の抑制、糊化温度の上昇、老化の抑制、酵素被消化性の低下、タンパク質機能の付与を達成することができました。
 さらに、同様の機能改変を、タンパク質の構成単位であるペプチド、アミノ酸とのハイブリッド化によっても達成することができました。
 また、ポリリジンとのハイブリッド化により、抗菌性のある澱粉を創出することにも成功しました。
 その他、生分解性プラスティックとして、食器等にも応用の可能な疎水化澱粉の創出にもチャレンジしています。


REFERENCES

Ito, A.; Hattori, M.; Yoshida, T.; Watanabe, A.; Sato, R.; Takahashi, K., Regulatory Effect of Amino Acids on the Pasting Behavior of Potato Starch Is Attributable to Its Binding to the Starch Chain. J. Agric. Food Chem. 2006, 54 (26), 10191 - 10196. [Abstract]

Ito, A.; Hattori, M.; Yoshida, T.; Takahashi, K., Contribution of the Net Charge to the Regulatory Effects of Amino Acids and epsilon-Poly(L-lysine) on the Gelatinization Behavior of Potato Starch Granules. Biosci. Biotechnol. Biochem. 2006, 70 (1), 76-85.[Abstract]

Yang, W.; Komine, N.; Hattori, M.; Ishii, Y.; Takahashi, K., Improvement of patato starch by conjugation with e-poly(L-lysine) through the Maillard reaction. J. Appl. Glycosci. 2005, 52, 253-259.

Yamagishi, Y.; Hattori, M.; Yoshida, T.; Takahashi, K. Improvement of the functional properties of sucrose stearate by phosophorylation. J. Agric. Food Chem. 2004, 52, 8039-8045. [Abstract]

Ito, A.; Hattori, M.; Yoshida, T.; Takahashi, K. Reversible Regulation of Gelatinization of Potato Starch with Poly( e-lysine) and Amino Acids. Starch 2004, 56, 570-575. [Abstract]

Takahashi, K.; Ogata, A.; Yang, W.H.; Hattori, M. Increasing the Hydrophobicity of Carboxymethyl Starch Film by Conjugation with Zein. Biosci. Biotechnol. Biochem. 2002, 66, 1276-1280.[Abstract]

Yang, W.; Hattori, M.; Kawaguchi, T.; Takahashi, K. Properties of Starches Conjugated with Lysine and Poly-lysine by the Maillard Reaction. J. Agric. Food Chem. 1998, 46, 442-445. [Abstract]

Hattori, M.; Aiba, Y.; Nagasawa, K.; Takahashi, K. Functional Improvements in Alginic Acid by Conjugating with beta-Lactoglobulin. J. Food Sci. 1996, 61, 1171-1176. [Abstract]

Yang, W.; Hattori, M.; Takahashi, K. Functional Changes of Carboxymethyl Potato Starch by Conjugation with Amino Acids. Biosci. Biotech. Biochem. 1995, 59, 2203-2206. [Abstract]

Hattori, M.; Yang, W.; Takahashi, K. Functional Changes of Carboxymethyl Potato Starch by Conjugation with Whey Proteins. J. Agric. Food Chem. 1995, 43, 2007-2011. [Abstract]

Takahashi, K.; Hattori, M.; Features of Protein-Starch Granule Conjugates. In Food Hydrocolloids: Structures Properties, and Functions; Nishinari, K. and Doi, E. Ed. ; Plenum Press: New York, 1994; Vol. pp 467-472.


ENGLISH

東京農工大学のホームページへ

食品化学研究室のホームページへ