第5章 細 胞


細胞は生命の単位である。
本章では、細胞発見の歴史と細胞の構造や機能について紹介する。

1 細胞説と細胞の構造

 ? 細胞発見の歴史と細胞説
 イギリスのロバート・フック(1635-1703)は、自作顕微鏡で様々な物を対象に"ミクロの世界"を観察、1665年にMicrographiaという図版集を出版した。その図版のうちの1枚が、コルク(Quercus suber)の薄い切片を自作顕微鏡で観察し、コルクが多数の"小部屋"からなっていることを見出し、この"小部屋"をCellと呼んだ。Cellは、"修道院の独居房"が原義である。なお、コルクは植物(コルクガシ)の死んだ組織であるため、フックは細胞壁しか観察していなかったことになる。その後、レーウェンフック(オランダ、1632-1723)が1702年に顕微鏡を用いて水滴中の微生物の観察を、ロバート・ブラウン(イギリス、1773-1858)がランのcellを観察し、核を見出していた。Cellを"細胞"という言葉に邦訳したのは、1833年、宇田川榕庵(1797-1846)である。宇田川榕庵の使用した顕微鏡(シーボルトから贈られたとされる)は早稲田大学図書館が所蔵している。

細胞説
1838年:「植物の体は細胞からできている」 シュライデン(ドイツ、1804-1881)
1839年:「動物の体は細胞からできている」 シュワン(ドイツ、1810-1882)
1858年:「全ての生物は生命の基本単位 (細胞) から成り立っており、一つ一つの細胞は完全な生命の特質を兼ね備えている」 ウィルヒョー(ドイツ、1821-1902)

→「生物体の構造と機能の基本単位は細胞である」

? 細胞の多様性と共通性
 以下に述べるように、細胞には多様性が見られる。我々は、しばしばその違いに目を向けがちであるが、共通な点に生物としての重要な機能などがある場合が多い。

@ 細胞の大きさ
 通常1?50 μm(0.1 μm?7 cm)。最も小さな細胞は、マイコプラズマであり、大きな細胞としては、ダチョウ未受精卵の卵黄(φ約7 cm)等を例示できる。
 マイコプラズマ等の特殊な細胞を除くと、細胞は光学顕微鏡で観察可能なサイズである。また、細胞小器官(後述)のうち、核・葉緑体・ミトコンドリア・液胞などは光学顕微鏡で観察可能な大きさであり、リボソーム・小胞体等は電子顕微鏡でのみ観察可能である。
A 細胞の形
 球形、立方体、紡錘形、細長い、不定形等、様々な形をとる。植物や菌類の細胞の形は細胞壁によって決定される。植物や菌類の細胞壁を酵素処理により除去してできるプロトプラストは球形になることからこれが示される。
B 細胞の基本構造
 細胞膜(cell membrane)に包まれる。細胞内には細胞質基質(cytosol)が満たされており、それに浮かぶ形で細胞小器官が存在する。細胞質基質は、流動し、解糖の場である。細胞小器官の機能については後述する。
C 原核細胞・真核細胞
i) 原核細胞では、核膜に包まれた核はなく、遺伝子(DNA)は裸で存在している。また、ミトコンドリアや葉緑体等が存在しない。原核細胞によって構成される生物を原核生物 prokaryoteと呼び、一般に単細胞(一部のラン藻は多細胞)で存在する。細菌類やラン藻類が原核生物である。
ii) 真核細胞には、核膜で包まれた核が存在、その内部に染色体がある。また、二重の膜を持つ葉緑体、ミトコンドリア等の細胞小器官を持つ。これらの細胞小器官は、原核生物に原核生物である好気性細菌やラン藻類が取り込まれた結果であるとする説(細胞内共生説)が一般的である。真核細胞を持つ生物を真核生物 eucaryoteと呼び、菌類、動物類、植物類等、原核生物以外の生物全てが含まれる。
D 動物細胞・植物細胞
 動物細胞と植物細胞は、核の存在、ミトコンドリア、リボソーム、小胞体の存在など類似点が多い。しかしながら、細胞壁が植物細胞には存在するが動物細胞には存在しない、植物細胞(菌類を除く)には葉緑体や色素体が存在するが動物細胞には存在しない、植物細胞では液胞が発達するが動物細胞では非常に小さい、等の異なる点も見られる。

2 細胞膜 plasma membrane
 細胞を包み、外界と隔てる役割を持つ。
@ 構造
リン脂質二重層からなる厚さ4?17 μmの単位膜(生体膜)である。リン脂質の脂肪酸部分は疎水性(非極性)であるため、親水性のグリセロール部が表面に露出している。壊れても修復されやすい理想的な構造である。このリン脂質二重層は常温で流動していて二重層中にモザイク状にはめ込まれているタンパク質分子(膜タンパク質)も比較的自由に動くことができる(流動モザイクモデル)。膜タンパク質の多くは、二重層を貫通している。核膜、小胞体、細胞小器官等の膜も基本的に細胞膜と同様な構造、性質を持つことから、この様なリン脂質二重層からなる膜を生体膜、あるいは単位膜とも呼ぶ。
A 細胞膜の性質と機能
 i) 半透性に類似した基本性質
細胞膜は溶媒は通過させるが溶質(例えばショ糖)は通過させない、半透性のセロハン膜に類似した性質を持つ。この通過にはエネルギーの消費を伴わない。しかしながら、以下に述べるように細胞膜は完全な半透性ではないことに注意を払わねばならない。なお、植物の細胞壁は、溶媒も溶質も通過させる全透性を示す。
細胞膜の半透性を観察する実験として、動物の赤血球を用いた溶血実験、および植物細胞を用いた原形質分離実験が有名である。
  ii) 選択的透過性
細胞膜は溶質の種類によって、通過させたり、通過させなかったり、あるいは、その通過速度を制御している。この様な性質を、選択的透過性と呼ぶ。細胞は選択的透過性を利用することで生命現象に必要な物質を細胞内に取り込み、不要な物質を細胞外に排出する。選択的透過性には、エネルギーの消費を伴わない受動輸送とエネルギー(ATP)の消費を伴う能動輸送がある。
a) 受動輸送 passive transport
エネルギーの消費を伴わず、細胞内外の物質の濃度差に依って濃度の高い方から低い方へと物質が輸送される現象。分子のサイズ、脂溶性等によって物質毎にその輸送速度は異なる。また、ナトリウムイオン(Na+)等は特殊な膜タンパク質であるチャネルタンパク質を通って輸送される。
b) 能動輸送 active transport
ATPを消費して、積極的に特定の物質を通過させるはたらき。例えば、動物の赤血球細胞内には、血漿(赤血球細胞外液)と比較するとカリウムイオン(K+)濃度が高く、逆にナトリウムイオン(Na+)濃度が低い。これは、細胞膜中に存在する一種の膜貫通型タンパク質であるNa+, K+-ATPアーゼ(ATP分解酵素)がポンプとして機能し、ATPの分解によって得られるエネルギーを用い、それぞれのイオンの濃度勾配に逆らってK+を細胞に取り込むと同時にNa+を細胞外に排出しているためである。
  iii) 食作用
細胞外に存在する粒子を細胞膜が包み込むようにして細胞内に取り込む現象。粒子は、単位膜に包まれた小胞の内部で消化される。マクロファージが異物を取り込んで無毒化したり、アメーバが食物を取り込んで消化する例が有名である。
  iv) 分泌 secretion
細胞内で産生された分泌型酵素やホルモンペプチドなどが、単位膜に包まれた小胞に含まれて存在し、この小胞の膜が細胞膜と融合する際に細胞外へ放出される現象を言う。
  v) シグナル受容体
膜タンパク質には、細胞外部からの情報伝達物質や刺激を受ける機能を持つものがある。このようなものをシグナル受容体と呼ぶ。例えば、酵母細胞膜には、有性生殖(交配)に必要なフェロモンの受容体が存在し、この受容体が受けたシグナルは、三両体G-タンパク質を経て、MAPキナーゼシグナル伝達系等に伝えられ、交配が開始される。

3. 細胞骨格(辻村)
 動物の体をつくる細胞にはそれぞれ固有の形がある。たとえば、ヒトの赤血球は円盤状の形をしている。筋肉線維(多核細胞)は紡錘形、白血球はアメーバの形である。また、神経細胞は核の存在する細胞体から、樹状突起と軸索とという2本の突起を伸ばしている。小腸上皮細胞は、腸管の内腔に向かって多数の突起を出している。目の光受容細胞はさらに複雑な形である。細胞はどのようにしてこのような形をつくり、形を維持しているのだろうか。
 細胞膜の輪郭によって細胞の形が表されるために、細胞の形が細胞膜によって決まっているかのような誤解がある。しかし、これは硬い細胞壁をもつ植物や細菌の細胞にはあてはまっても、動物細胞にはあてはまらない。細胞膜は脂質二重層からできており流動的に自由に形を変えることができる。動物の体の大部分が水からなることを考えると、細胞壁をもたない動物細胞は、細胞膜だけで形が決まるとするならばすべて球形となるはずである。しかし、実際はそうではない。動物細胞には細胞の形を決める何らかのしくみがあるはずである。
 動物細胞はその内部に特殊な硬いタンパク質性の構造物、すなわち、細胞骨格をもっていおり、これが細胞の形づくりや形の維持に働いている。細胞骨格と細胞膜の関係は、テントの支持棒と幕の関係と同じである。テントの幕が支持棒にとめて張られるのと同じように、まず、細胞骨格が存在し、この細胞骨格に膜タンパク質を介して細胞膜が留めて張られているのである。細胞が形を変えるときは、まず、細胞骨格の構造が変化し、これに合わせて、流動性の細胞膜が形を変える。すなわち、細胞の基本的な形は細胞骨格が決めているのであって、細胞膜が決めているのではない。
 細胞骨格は3種類存在し、それぞれ異なる分子によりできている。すなわち、微細線維(マイクロフィラメント)と、微小管(マイクロチュービル)、中間径フィラメントである。これらの分子構造物が細胞内を縦横に走り、細胞を形づくり、形を維持している。細胞が形を変えるときはこれらの構造物が新生されたり、解体されたり、配置を換えたりする。また、細胞内の多くの高分子や細胞小器官は細胞骨格に結合されることにより、細胞内の一定の位置に保たれている。
 細胞骨格は、原核細胞には存在しない。植物細胞の形は外骨格として働く細胞壁によって決まり、維持されており、細胞骨格の役割は明らかではない。

3種類の細胞骨格
 (1)微細線維(マイクロフィラメント)  細胞骨格の中で細胞内に最も多く存在する。直径が3−6nmの線維で、弾力性があり、しかも、硬い。針金のようなイメージである。球状タンパク質のアクチンの重合体で、2本鎖がゆるいラセンをまいているような構造をしている。アクチン分子は重合と解離を細胞内で繰り返しており、アクチン分子の重合が進めば微細繊維は伸長し、解離が進めば繊維は短縮する。菌類から分離された薬物、サイトカラシンBはアクチン分子の重合を阻害するので、微細線維の研究によく用いられる。
 微細線維は細胞内に大量に見られるが、特に顕著な場合は、アメーバの糸状突起、小腸上皮細胞の突起、神経の成長円錐の突起、線維芽細胞のストレスファイバー、上皮細胞の接着帯、分裂細胞の収縮環などである。アメーバの糸状突起、小腸上皮細胞の突起、神経の成長円錐の突起の中には微細線維が束になって走っている。細胞が突起を伸ばすときは微細線維を伸長させ、突起を引っ込めるときは微細線維を短縮する。繊維細胞のストレスファイバー、上皮細胞の接着帯、分裂細胞の収縮環は細胞の張力や収縮に関係している。いずれの場合にも、サイトカラシンBで処理すると微細線維が崩壊し、突起が消失したり、細胞の張力が失われたり、収縮が止まったりする。ホヤの初期胚をサイトカラシンB で処理すると細胞質分裂が抑制され、核分裂だけが進行する結果、一細胞の多核の胚が発生する。

 (2)微小管(マイクロチュービル) 長い中空の管構造で、直径20-25nmである。硬く、棒(竹)のイメージで、細胞の形を安定化するための骨格として働く。球状タンパク質のチューブリンの重合体でαチューブリンとβチューブリンのヘテロ2量体が重合して連なって形成される。細胞内では重合と解離を繰り返している。重合は多くの場合、細胞核の近くにある中心小体で起こるので、微小管はここから細胞の周辺部に向かって伸びる。解離は周辺部の末端で起こる。周辺部での解離が抑制されると安定な微小管となり、中心小体から周辺部までの細胞構造が安定化する、あるいはこの間の細胞質部分が伸長する。解離が盛んに起こるとこの間の構造が不安定になり、この間の細胞質部分の形が変化する、あるいは、短縮する。微小管には極性があり、中心小体の位置を−端、周辺部を+端とよぶ。植物から抽出されたアルカロイドの一種、コルヒチンという薬物は、チューブリンに結合し微小管の重合を阻害する。
 微小管は、アメーバや繊維細胞では細胞の長軸方向に、神経軸索内を細胞体から末梢に向けて走っている。鞭毛や繊毛の内部には特徴的な微小管の束が走る。また、分裂細胞の紡錘体は微小管からできている。アメーバをコルヒチン処理すると、細胞の形態がほぼ円形となり移動が止まる。神経細胞を処理すると軸索突起が引っ込んでしまうが、コルヒチンを除くと再び軸索突起が伸長する。分裂細胞をコルヒチン処理すると紡錘体が破壊され、染色体を通常の2倍もつ4倍体の細胞が生じることがある。

(3)中間径フィラメント 直径10nmの波打った線維で、多くの線維が絡み合って網目状の構造をつくり広範囲の細胞質に分布する。ロープあるいは布のイメージで、引っ張り力への強さを生み出し、細胞の機械的な安定性に働いている。繊維状タンパク質の、ケラチン、ビメンチン、核ラミン、ニューロフィラメントタンパク質など数種の分子が4量体をつくり、この4量体が重合して中間径フィラメントを形成する。極性はない。
 上皮細胞にはケラチン線維が多量に存在し、細胞間結合構造のデスモゾームとつながって、上皮組織の機械的強度を生み出している。神経細胞の軸索中にはニューロフィラメントが長軸に沿って延びている。細胞核の内膜を裏打ちする核ラミナは核ラミンからなる網目状構造で、染色体を留めている。細胞分裂時には一旦解離し、分裂後再び出現する。

4. 細胞運動(辻村)
 細胞はその形を維持するだけでなく、ときには変化させる。たとえば筋肉細胞(筋繊維)は収縮する。これにより骨格が動かされ、動物は動きまわることができる。鞭毛や繊毛の運動も細胞の一部分の継続的な形態変化である。これにより、精子は移動することができるし、気管支の細胞はゴミやタンを排出することができる。また、色素細胞は拡大したり、収縮したりして細胞の形を変える。これにより、動物は表皮の色、すなわち体色を変化させる。魚、カメレオン、イカ、タコなどの体色変化はよく知られている。さらに、分裂細胞の細胞質分裂、線維細胞のアメーバ運動は形の変化でもある。このような細胞が自ら行なう形の変化を細胞運動と呼ぶ。細胞はどのようなしくみで細胞運動するのだろうか。
 細胞の形の変化は細胞内成分の移動により引き起こされる。これには、化学エネルギーを機械エネルギーに変換するモータータンパク質と細胞骨格が関与している。この二つは鉄道の汽車とレールの関係である。細胞骨格がレールの役割を担い、この上をモータータンパク質がATPのエネルギーを利用しながら移動するのである。モータータンパク質は2つの状態の形をとる分子で、ATP分子を1個分解する毎に、レール分子との接着あるいは離脱と、2つの形態間の変化とを一定の順序で行なって、まるで、レール上をトロッコに乗ったヒトが棒でこぎながら進むようにして移動する。大別して、微細線維をレールとするものと、微小管をレールとするものの2つのシステムが存在する。

(1)微細線維(マイクロフィラメント、アクチン線維)とミオシン
 微細線維のレールの上をミオシンと呼ばれるモータータンパク質が移動するシステムである。ミオシンはATPを分解しながら微細線維上を移動する。
 筋肉は、このシステムを最も大規模に採用している組織である。筋肉は多数の並行して走るアクチン線維とその間に束となったミオシン分子が櫛のように入り込んだ構造(サルコメア)の繰返しからなり、神経からの信号によって筋肉細胞が興奮すると、ミオシンはいっせいにATPを分解してアクチン線維間により深く滑り込む。植物細胞に見られる原形質運動は、微細線維にそって、ミオシン分子に結合した小胞や細胞器官が運ばれる現象である。また、動物の分裂細胞に見られる収縮環も微細線維とミオシン間の滑り運動で細胞質を分割するための装置である。

(2)微小管とダイニンあるいはキネシン
 もう1つが微小管をレールにした細胞運動システムである。モータータンパク質はダイニンとキネシンの2種類が存在し、どちらの場合にもATPを分解しながら微小管上を移動する。微小管が中心小体のある細胞中央部から周辺部へと伸びているので、このシステムによる移動は細胞の中央部と周辺部との間を結ぶのに働いている。2種類のモータータンパク質で移動の方向が異なり、ダイニンの場合は、細胞周辺部(微小管の+端)から中央部(微小管の−端)に向かって移動し、キネシンの場合は細胞中央部(微小管の−端)から周辺部(微小管の+端)に向かって移動する。
鞭毛や繊毛はこのシステムを用いた精巧な運動装置である。鞭毛や繊毛の内部にはその長軸方向に「9+2構造」と呼ばれる微小管の特殊な構造が走り、この微小管にダイニンが結合している。鞭毛や繊毛が運動するときには、ダイニンがATPを分解しながら隣り合う微小管上を滑り移動しようとするので、微小管同士の間にズレが生じる。このズレによる歪みによって鞭毛や繊毛は曲る。これが繰返し行なわれて、鞭毛や繊毛の鞭打ち運動となる。細胞分裂時の染色体の両極への移動もこのシステムによる。微小管でできた紡錘体上をモーター蛋白質に結合した染色体が移動するのである。神経軸索内には軸索流と呼ばれる物質移動がある。この移動は軸索内を長軸方向に走る微小管上をモータータンパク質により、細胞体から末梢へ、あるいは末梢から細胞体へタンパク質や老廃物などの細胞構成成分が運搬される減少である。また、色素細胞の形の変化は、ホルモンや神経刺激に応答して、周辺部から中央部に向かって走る微小管にそって細胞構成成分が運ばれることによって起こる。
 体から試験管内に取り出された大部分の動物細胞が行なうアメーバ運動は、 前方での葉状突起形成と泡立ち、下面での基盤への接着、細胞質の前方への流動、後端での細胞質の収縮などが組み合わされた複雑は過程である。コルセミドで微小管を壊すと、細胞の極性が失われ、細胞全周での葉状の泡立ちが起こるが、細胞は動かなくなる。これは、微小管にそった細胞質移動がアメーバ運動に重要であることを示している。

5 細胞小器官
 細胞内の細胞質基質中には、核・リボソーム・小胞体・ミトコンドリア・葉緑体(色素体)・ゴルジ体・中心体・リソゾーム・液胞等、細胞の生命活動に必要な機能を分担する構造体が存在する。これらを細胞小器官と呼ぶ。これら細胞小器官のうち、核・小胞体・ミトコンドリア・葉緑体・ゴルジ体・中心体・液胞は真核細胞に特有の器官であり、また、葉緑体は植物細胞に特有で動物細胞には見られず、液胞も植物細胞では発達するが動物細胞では発達しない。
細胞小器官のそれぞれの特徴や機能は表 を参照のこと。

6 細胞内共生説
真核細胞は原核細胞から進化してできたと考えられるが、その進化の過程を、原核細胞の中に、原核生物である好気的細菌が共生してミトコンドリアが、原核生物であるラン藻が共生して葉緑体ができたとする説。この説の論拠として、ミトコンドリアや葉緑体が独自のDNA(一般に原核型の環状DNA)を持っている、ミトコンドリアや葉緑体の機能が好気的細菌やラン藻の機能と類似する、ミトコンドリアや葉緑体の内膜の脂肪酸組成などが外膜(あるいは細胞膜)と異なり、原核生物に類似する、現存する真核生物に細菌やラン藻と共生している物がある、等を挙げることができる。

7 細胞壁 cell wall
植物および菌の細胞は、細胞膜の外側に形成される細胞壁によって覆われ、保護、形を維持されている。植物細胞を低張液につける実験において、赤血球と異なり溶血しないで細胞が膨潤するのは、植物細胞が細胞壁によって守られているからであり、低張液につけた植物細胞内では膨圧がたかまり、細胞がふくらむのである。