多羅尾 光徳

オーストリア・ザルツカンマーグート地方にて
   
インド・西ベンガルにて
墺太利・ザルツカンマーグート地方にて

インド・西ベンガルにて


tarao@cc.tuat.ac.jp

研究のテーマ・内容

 地球上の生物量の大部分は,微生物と植物から構成されています。したがって,生物を通じた地球上の物質循環の大部分は,微生物と植物との間で行なわれていることになります。動物の存在は必ずしも必要ではありません。微生物や植物の生物量からすれば,ほんのつけたし程度の量しかない動物の,さらにそのつけたし程度の人間が,物質循環をかく乱・遮断し,自身の生存の危機につながる環境の悪化をもたらしています。環境中の微生物の生活様式を明らかにすることを通じて生態系の構造と機能を解明し,人間の生存が持続できるような,合理的な生態系管理のあり方を追求するのが私の研究の目的です。現在は,以下の内容に取り組んでいます。
 脱窒細菌を分離するためにこれまで用いられてきた培地の有機炭素・窒素濃度は,自然環境のそれらの約100倍も高いものでした。これらの濃度をなるべく自然環境のそれらに近づけた培地を用いたところ,これまで用いられてきた培地では分離することのできない脱窒細菌を得ることができました。現在は,さらに脱窒細菌を分離すること,これらの脱窒細菌の脱窒能の特性を解明することに取り組んでいます。
  1. 微生物食物連鎖が,微生物バイオマス・代謝活性・細菌の生残戦略におよぼす影響を研究しています。(関連文献:論文2,4,5)
  2. 微生物食物連鎖が,土壌の炭素・窒素収支におよぼす影響を研究しています。(関連文献:論文4,5,9,10)
  3. 微生物食物連鎖が,水界の栄養塩の再生産におよぼす影響を研究しています。
  4. 原生動物の細菌の捕食に影響をおよぼす環境要因を解明しています。(関連文献:論文2)
 自然環境中にはさまざまな人工化学物質を分解できる微生物が多数棲息しているにもかかわらず,環境中では人工化学物質はしばしば長期間にわたって低濃度で残留します。また,実験室内の純粋培養では分解能を発揮する分解菌を,水や土壌などの環境試料に接種しても,期待通りのはたらきをしなかったり,生残しなかったりすることがしばしばおこります。これらのことは,分解微生物が自然環境においてその能力を発揮することや成長・生残することを制限しているさまざまな環境要因(人工化学物質濃度,温度,pH,光,毒性物質,易分解性有機物,捕食者など)が存在することを意味します。それらを解明することを目的としています。
 これら以外にも,学生諸君には環境問題の原因である人間社会の構造と機能にも目を向けることの大切さを教えています。

所属学会


論 文

  1. Ozaki, H., Co, T.K., Le, A.K.,(他11名,5番目)(2013) Human factors and tidal influences on water quality of an urban river in Can Tho, a major city of the Mekong Delta, Vietnam. Environ. Monit. Assess. 185 (印刷中)
  2. 木戸文香・多羅尾光徳 (2013) 吸リン材とポーラスコンクリートブロックを組み合わせた水浄化を行っている実験池のクロロフィルa濃度に及ぼす水温,リンおよび窒素濃度の影響, 人間と環境39: 2-10
  3. Hahn, M.W., E. Lang, M. Tarao, and U. Brandt. (2011) Polynucleobacter rarus sp. nov., a free-living planktonic bacterium isolated from an acidic lake. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 61: 781-787 (doi: 10.1099/ijs.0.017350-0)
  4. Tarao, M., J. Jezbera, and M.W. Hahn. (2009) Involvement of cell surface structures in size-independent grazing resistance of freshwater Actinobacteria. Appl. Environ. Microbiol. 75: 4720-4726 (doi:10.1128/AEM.00251-09)
  5. 三堀純・多羅尾光徳・瀬戸昌之(2009)ポーラスコンクリートブロックを用いた地下水中からの窒素除去法,人間と環境35:54-59.
  6. Tarao, M., N. Takeda, and M. Seto. (2008) Respiration and carbon balance of the bacterium Pseudomonas sp., a protozoan Tetrahymena thermophila, and a fungus Trichoderma viride in a food chain system with glass beads . Microbes Environ. 23:244-247. (doi:10.1264/jsme2.23.244)
  7. 松野健二・多羅尾光徳・瀬戸昌之(2008)ガラスビーズを用いた培養系における細菌Pseudomonas sp. strain DP-4の脱窒に及ぼす原生動物Tetrahymenta thermophilaまたは糸状菌Trichoderma virideの影響,日本土壌肥料学雑誌79:69-75.
  8. 多羅尾光徳・池内満政・瀬戸昌之(2006)堆肥連用土壌と化学肥料連用土壌における2,4,5-trichlorophenol(TCP)の微生物分解,TCP分解微生物の密度,および土壌溶液の溶存有機炭素量,人間と環境32:141-144.
  9. 申用哲・多羅尾光徳・瀬戸昌之(2005)陸水におけるPseudomonas aeruginosaの生残性を制限している無機塩類を検討するための合成無機培地の有効性,人間と環境31:40-48.
  10. Isobe, K.O., M. Tarao, M.P. Zakaria, H.C. Nguyen, Y.M. Le, and H. Takada (2004) Effect of environmental factors on the relationship between concentrations of coprostanol and fecal indicator bacteria in tropical(Mekong Delta) and temperate(Tokyo) freshwaters. Appl. Environ. Microbiol. 70:814-821. (doi:10.1128/AEM.70.2.814-821.2004)
  11. 多羅尾光徳・松野健二・瀬戸昌之(2003)ガラスビーズカラムにおける土壌微生物群集のバイオマスおよび窒素・炭素収支におよぼすpHの影響,人間と環境29:117-121.
  12. Tarao, M., Y. Yamashita, A. Sato, and M. Seto (2002) Effects of protozoa and glass beads on bacterial biomass and metabolism in a food chain system of glucose-Pseudomonas sp. strain DP-4-Tetrahymena thermophila. Microbes Environ. 17:128-133.
  13. Isobe, K.O., M. Tarao, M.P. Zakaria, N.H. Chiem, L.Y. Minh, and H. Takada (2002) Quantitative application of fecal sterols using gas chromatography-mass spectrometry to investigate fecal pollution in tropical waters: western Malaysia and Mekong Delta, Vietnam. Environ. Sci. Technol. 36:4497-4507. (doi:10.1021/es020556h)
  14. 申用哲・多羅尾光徳・瀬戸昌之(2002)Pseudomonas sp. strain DP-4による2,4-dichlorophenolと2,4,5-trichlorophenolの分解におよぼす可視光の阻害的な影響,人間と環境28:2-9.
  15. 松永潤・多羅尾光徳・瀬戸昌之(2001)純粋培養・混合培養におけるPseudomonas属細菌DP-4株による低濃度・高濃度2,4-dichlorophenol(DCP)の分解後にみられるDCPの残留,日本微生物生態学会誌16:40-47.
  16. Tarao, M., and M. Seto (2000) Estimation of the yield coefficient of Pseudomonas sp. strain DP-4 with a low substrate (2,4-dichlorophenol[DCP]) concentration in a mineral medium from which uncharacterized organic compounds were eliminated by a non-DCP-degrading organism. Appl. Environ. Microbiol. 66:566-570.
  17. 多羅尾光徳・伊藤昌史・瀬戸昌之(1999)いくつかの環境要因が2,4-dichlorophenol-Pseudomonas sp. strain DP-4の純粋培養系における二次速度定数におよぼす影響,人間と環境25:2-7.
  18. 保坂友寛・伊藤昌史・多羅尾光徳・瀬戸昌之(1998)極限環境条件下におけるPseudomonas属の細菌 DP-4 の生存と2,4-dichlorophenolの生分解,人間と環境24:2-9.
  19. 多羅尾光徳・山崎彰子・瀬戸昌之(1997)いくつかの環境試水における高濃度および低濃度の2,4-dichlorophenolの分解と分解菌密度の変化に関する比較研究,人間と環境23:146-155.
  20. 多羅尾光徳・小野塚和之・瀬戸昌之(1997)低濃度の2,4-dichlorophenolに汚染された奥多摩湖の試水におけるバイオレメディエーションの一つの試み,人間と環境23:74-81.
  21. 多羅尾光徳・中澤智徳・瀬戸昌之(1996)液体培地と有機物含量の異なるいくつかの土壌におけるPseudomonas属の細菌 DP-4 による2,4,5-trichlorophenolの分解の比較研究,人間と環境22:152-160.
  22. 竹野泰典・多羅尾光徳・瀬戸昌之(1995)液体培地と有機物含量の異なるいくつかの土壌におけるPseudomonas属の細菌(DP-4)による2,4-dichlorophenolの分解の比較研究,人間と環境21:126-133.
  23. 多羅尾光徳・黒畑朱明・瀬戸昌之(1995)Pseudomonas属の細菌(DP-4)による2,4-dichlorophenol(DCP)分解におよぼすDCPと補助基質の影響,人間と環境21:61-67.
  24. 松本浩一・飯田亮一・多羅尾光徳・瀬戸昌之(1994)細菌の一種Pseudomonas sp.(DP-4)による2,4-dichlorophenolと2,4,5-trichlorophenolの分解に関する比較研究,人間と環境20:96-103.
  25. 多羅尾光徳・本間務・瀬戸昌之(1994)細菌の一種Pseudomonas sp.(DP-4)による2,4,5-trichlorophenolの共役代謝,人間と環境20:2-7.
  26. 多羅尾光徳・瀬戸昌之(1994)土壌と液体培地における2,4-dichlorophenolの微生物分解の比較研究,土と微生物43:9-16.
  27. Tarao, M., K. Tsunozaki, and M. Seto (1993) Biodegradation of 2,4-dichlorophenol at low concentration and specific growth rate of Pseudomonas sp. strain DP-4. Bull. Jpn. Soc. Microb. Ecol.(Nihon Biseibutsu Seitai Gakkai Shi) 8:169-174.
  28. 多羅尾光徳・田中緑・瀬戸昌之(1993)地下試水に接種したPseudomonas sp.(DP-4)による2,4-dichlorophenolの分解の再現性,人間と環境19:125-131.
  29. 松本浩一・多羅尾光徳・瀬戸昌之(1993)いくつかの土壌における2,4-dichlorophenolの微生物分解,人間と環境19:68-74.

そ の 他

  1. 多羅尾光徳(2011)宇宙のロマンは平和でこそ,いつでも元気,248:1(2012年6月号)
  2. 多羅尾光徳(2011)環境問題を考える視点−ヒトは社会と自然の二つの環境に支えられている,前衛,874:206-231(2011年9月号)
  3. 多羅尾光徳(2011)都大教の掲げる要求と共同の取り組み,全大教時報,34:31-43.
  4. 多羅尾光徳(2010)人と社会の環境学,民医連医療,2010年5月〜2011年8月
  5. 多羅尾光徳(2009)「地球温暖化懐疑論」を考える(上・下),民主青年新聞,2009年11月23日・30日
  6. 多羅尾光徳(2009)国立大学法人の公共性をむしばむ知的財産保護,日本の科学者44:66-71.
  7. 多羅尾光徳(2006)自民党・新憲法草案と大学の自治,人間と環境32:65-66.
  8. 多羅尾光徳(2005)海外在住者の国政選挙投票権についての問題とその改善のための一提案,日本の科学者40:678.
  9. 多羅尾光徳(2005)選挙制度がもたらした巨大与党,人間と環境,31:153.
  10. 多羅尾光徳(2005)不法投棄現場の原状回復事業をめぐる住民間の "温度差",人間と環境31:22-24.
  11. 青木和光・小河勉・多羅尾光徳・友田滋夫(2004)ポストドクター研究者制度の現状,日本の科学者39:228-234.
  12. 多羅尾光徳(2003)ヴィエトナム,メコン・デルタの農業の現状と課題,人間と環境29:28-31.
  13. 多羅尾光徳(2001)遺伝子組換え植物への不信感,日本の科学者36:604-605.
  14. 多羅尾光徳(2000)行政の提案する新たな廃棄物処理の方向は何をもたらすか,日本の科学者35:175-179.
  15. 多羅尾光徳・多羅尾治子(1999)自治体の廃プラスティック類再資源化事業−現在の動向と多摩川衛生組合における事例−,人間と環境25:115-123.
  16. 多羅尾光徳(1998)微生物で環境を浄化する,民医連医療,No310.62-63.
  17. 多羅尾光徳・瀬戸昌之(1996)低濃度の塩素化フェノールの微生物分解と分解微生物の成長,人間と環境22:23-37.

著 書

  1. 日本科学者会議編(2004)GUIDEBOOK 研究の方法,リベルタ出版(共著)


書 評

    1. 浅見輝男「福島原発大事故−土壌と農作物の放射性核種汚染」アグネ技術センター出版(日本の科学者,46 印刷中)
    2. 小島道一(編)「アジアにおける循環資源貿易」アジア経済研究所(人間と環境,31:156-157)
    3. ジョゼ・ボヴェ,フランソワ・デュフール「地球は売り物じゃない!−ジャンクフードと闘う農民たち−」紀伊國屋書店(人間と環境,27
    4. 市民エネルギー研究所「2010年日本エネルギー計画」ダイヤモンド社(人間と環境,21:91-92)
    5. 浅井基文「新保守主義−小沢新党は日本をどこへ導くのか」柏書房(人間と環境,19:158-159)


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