里山地域の生物多様性保全

赤坂 宗光

ため池や農業水路は里地・里山の構成要素の一つであるが、地域の淡水生物多様性保全を考える上で、非常に重要な生態系である。そういった淡水生態系における水生植物をはじめとした淡水生物の群集組成や種多様性が決定されている機構を明らかにする研究を、現地調査やGIS・統計モデルを用いて明らかにしている。


小池 伸介

古くから人の利用が加えられてきた里山の生態系において、人為がどのように里山での生物多様性の維持機構に作用しているのかを明らかにしようとしています。


戸田 浩人

里山の代表的な樹種であるコナラは、木材生産が主目的ではなく、薪炭や落葉などの農業生産や農家生活において必要となる様々な資材を供給し、かつ防風林や水源涵養林として農地や集落を保全する機能を果たしてきた。伐採したコナラは薪炭やシイタケの原木などになり、切り株からは萌芽更新して再び森林が形成され、地表の落葉は堆肥や発酵熱利用の発芽床として利用してきた。この様にコナラ二次林は下刈り・伐採・萌芽更新・落葉採取などの人為的施業によって遷移を停滞させ、独特の生物多様性が維持されてきた。
森林生態系の物質循環を考えれば、人間が行ってきた落葉採取は森林の自己施肥機能への介入であるが、里山として維持管理されてきたコナラ利用の背景にはその萌芽能力・再生力の高さと菌根菌などの微生物との共生があげられる。コナラ二次林は将来的にも多面的機能の発揮が期待されており、その地力維持システムを明らかにしていく必要がある。


吉田 智弘

里山地域における二次林・雑木林は、人為的影響を受けることによって生物多様性の高い状態を維持しているシステムである。例えば、コナラ林は、伐採・萌芽更新の繰り返しにより、地上部の構造が複雑化しており、生物の棲み場所は多様化している。このような環境下における生物群集の構造とその形成・維持要因を明らかにすることによって、里山の生物多様性の維持機構を解明する。

キーワード:コナラ林、無脊椎動物、樹洞、群集生態