流域の水循環と物質循環

白木 克繁

山地における複雑な水循環を把握することにより、利用できる水の量と質を推定できることになるだけでなく、水の集中により発生する土砂災害を未然に防ぐための有力な指標とすることができます。ただし、山地に降った降雨がどのような経路をたどって渓流水になるかは非常に複雑です。山地の植生状況、表層土層の様子や土層厚の厚さの空間分布、地山となる基岩の地質による山体深部への浸透量の相違など、様々な要因があります。また、地形形状で判断される分水嶺が、山体深部においても同様に分水嶺となるとは限りません。それを、地形形状の分析、地質の分布、降水量・流出量の観測と水収支の解析、シミュレーションモデルによる分析、等を通して実態を把握します。現在は、対照流域実験により森林を伐採することの影響を詳細に検討しています。伐採方法による土砂流出量の相違、伐採後の水収支の変化の詳細を観測しています。


戸田 浩人

森林生態系での物質循環からみた森林の健全性,酸性降下物等に対する浄化機能を明らかにするためには,小流域単位での森林集水域における降水および渓流水の水質に関する研究が不可欠である。これは,渓流水質が森林生態系外への物質の流出状態を示すと同時に,森林生態系内における物質循環特性を反映おり,森林生態系の物質循環に及ぼす皆伐採・保育作業などの人為的な森林管理や,酸性降下物や温暖化といった環境変化に対する影響を知るうえでの指標となるからである。
これまで、長年に渡る本学森林流域の調査で,施肥,下刈,枝打といった作業による渓流の水量・水質に対する影響を明らかにしてきた。また,全国の演習林や神奈川県の水源林における物質循環と水質形成の調査を通して、窒素流出の推定や予測モデルの構築も試みている。