シカの増加による生態系影響

小池 伸介

シカの増加に伴う生態系への影響を様々な種群を対象に調査しています。扱う現象は直接効果だけでなく間接効果も扱うことで、シカの増加の影響を生態系全体で明らかにすることを目指しています。また、安定同位体比分析を用いることで、シカの増加の生態系への影響を長期的に検証します。


戸田 浩人

1990年頃から,日本各地で,ニホンジカの個体数が増加しており,それに伴い林床の下層植生への採食圧が増加している。シカによる採食圧の激化は,森林生態系の劣化を発生させる。健全な生態系サービスを得るためには,シカの採食圧が生態系の基盤である物質循環に与える影響を把握する必要がある。多くの森林においてシカ採食圧は,ササ類の矮小化・衰退を発生させている。
ササ類は日本固有の草本植物であり,地下茎による繁殖を行い,日本の林床で広く優占する。太平洋側の林床で優占するミヤコザサ群落は,落葉広葉樹林に匹敵するリターフォールを供給しており,葉内養分含有率が樹木よりも大きいことから森林生態系の物質循環に大きく寄与している。小流域においてシカ採食圧を防鹿柵で排除し、ササ植生の回復状況を長期的に観察できる試験区を設定した。これから,シカの採食圧の激化と森林生態系における物質循環機能との関係性の把握を進めている。


吉川 正人

奥日光や富士山の森林で,シカ食害によるササ枯れ後の植生の反応や,シカ不嗜好性植物の拡大プロセスなどについて研究をおこなっている.


吉田 智弘

シカの個体数増加にともなう森林生態系の改変が生じている現在では、持続的な森林管理のためには、生態系の状態を指標により、定量化し、現状を把握する必要がある。アリ類などの土壌動物は、容易に採集でき、種数・個体数ともに豊富に存在することから、生態系改変に対する生物指標として適している。私たちは、土壌動物を指標として、シカの個体数増加による生態系影響を評価することを試みている。

キーワード:生物指標、土壌動物、群集組成、森林