都市緑地の機能と保全

金子 弥生

東京の中心部に生息するタヌキの採食生態、社会構造、生息密度を調査し、大面積の都市緑地の都市生態系の維持における役割について考察を行っています。里山(日の出町)のタヌキと都心部のタヌキを対象として①都市のタヌキの体サイズや行動圏サイズの差異、②社会構造の特徴、③敷地外利用の有無や敷地の利用割合、④タヌキの健康状態やストレス状態を調査し、タヌキ個体群にとっての都市公園や緑地の生態学的価値について考察を行います。さらに、東京西部地域の河川敷や大規模緑地にニホンイタチやアナグマなどのイタチ科動物が生息することが分かってきています。DNA種判定や性判定技術、自動撮影装置を駆使してこれらの動物を記録し、分布状況や食性について調査しています。


小池 伸介

都市緑地の分断化などによる景観の変化が生物多様性に与える影響に関する研究:都市近郊を中心に、都市緑地の分断・孤立が生物多様性にどのような影響を与えているのかを様々な生物種群を用いて調査しています。また、都市緑地が持つ生物多様性保全機能の検証やどのような生態系サービスを供給できるのかといったテーマを扱っています。


下田 政博

公園管理を中心とした共同社会の創造の実験の場、自然との出会い、休息と非日常空間、人間形成と運動の場としての機能に着目した研究を行う。具体的には住民参加型管理が及ぼす地域住民の意識や利用行動の変化、及びそれに伴う生理心理的変化について検討する。


白木 克繁

都市の緑地はどの程度ヒートアイランドを防いでいるのでしょうか?地面をアスファルトで覆われた面積が多い市街地では、点在する都市林の役目が期待されます。衛星情報から熱画像情報を取り出して、都市の温度分布を分析する方法がありますが、衛星情報の解像度の限界もあり、小規模な都市林がどのように影響を与えているかの実態を把握することには困難があります。この研究室の活動では、実際に市街地を自転車に装着した精密温度センサーと葉面積指数センサー、GPSとで市街地の温度分布の詳細を探ります。このことより、大学キャンパスといった小面積緑地がどのような効果を持っているかの分析を行います。この調査法の利点は、衛星情報では上空から見た情報しか分からないが、自転車に移動により樹木の下、ビルの谷間、といった生活環境の実態の詳細を探ることができます。さらに、簡易に市街地のヒートアイランド状況を実測する方法を確立することで、一般住民にも可能な各地域の測定を行う手法を提供し、地球温暖化、ヒートアイランド、気候変動といった項目について、実感として危機感を持ってもらう”教材”としてのツールを提供できることを期待しています。


崔 東寿


戸田 浩人

都市緑地や都市に近い里山は、風致景観、都市生態系保全、環境教育の場、都市環境の改善等の機能を持つ。近年、これらの機能の重要性が認識され、都市緑地の新規造成、里山の再生などが多く行われるようになった。都市緑地においては景観上の問題から、里山においては近年見直されてきた有機肥料として、林床の下刈や落葉落枝の除去が行われている。この様な管理を極端に進めると、自己施肥機能を失い、土壌養分枯渇、さらには植栽木の枯死に至る。しかし、近年の都市緑地では養分不足による樹木衰退はみられていない。一方、周辺からのアスファルト粉塵流入による土壌中和、大気汚染等による養分負荷が進んでいるとも言われている。都市緑地において、樹木を健全かつ持続的に維持する管理が必要となるが、根本となる物質動態の基本情報が無い状態である。都市緑地・里山の物質動態の特性を把握することにより、現状と今後の管理方法について考究を進めている。


吉川 正人

植物からみた都市緑地の価値と機能を評価するため,都市域に孤立した森林の遷移の特性,都市緑地が地域の植物相の維持に果たす役割などについて研究している.


吉田 智弘

都市緑地は、都市環境における生物の重要な生息場所である。環境の変化に対する感受性の高い昆虫類は、都市緑地が生物にとってどのような環境であり、それらがどのように変化しつつあるかを示す生物指標として適している。そのような観点から、昆虫の群集構造や発生消長を調べている。

キーワード:昆虫、生物指標、都市化、都市生態系、ヒートアイランド効果