生物制御化学研究室への分属・進学を希望する学生へ

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2. 研究手法

 研究の進め方をもう少し詳しく説明しましょう。我々の研究室で行っている「生物活性天然物化学」の研究はおおよそ以下のような順序で進められます。

まず最初にあるのは興味ある生物現象です。「私たちの研究室では」の最初の例で言えば、植物の茎が伸びるという現象を見たときに、そこには茎を伸ばす調節物質が働いているのではないか、微生物が胞子を形成するという現象を観察したときには、それは何らかの誘導物質が蓄積することが引き金になっているのではないか、と推測するわけです。

次は、そのような調節物質や誘導物質などの生理活性物質が関与しているとしたら、どのようにしたら見つけることができるかを考えます。「バイオアッセイ(生物検定)」は「生物現象」を実験室内で(小さい規模で)短期間で再現できる、生理活性物質を検出する方法のことです。「バイオアッセイ」を確立することができれば、その生物現象に生理活性物質が関与しているかどうかを調べたり、色々な物質が含まれる混合物中の目的物質の量を測定することができます。
 バイオアッセイの確立と生理活性物質の存在の証明は、表裏の関係にあります。例えば、植物ホルモンの一種、ブラシノライドは「イネラミナジョイントテスト」というバイオアッセイによって発見されました。後になって、「ラミナジョイントテスト」はブラシノライドに鋭敏に反応するので、この方法を用いることにより、他の植物ホルモンも含まれる抽出物から、ブラシノライドを精製することが可能であったことが明らかにされたのです。

バイオアッセイが確立したら、いよいよ生理活性物質の精製です。溶媒抽出、クロマトグラフィーなどにより精製を進め、活性物質を純粋な形で取り出します。自分の追い求めている物質がどのような性質の化合物なのか、この段階ではわからないので、精製の際の挙動などから生理活性物質の性質を推測して、より効果的な精製方法を考えていきます。経験がものをいうステップですが、がむしゃらに実験を行って(実験の量で)乗りきることもあります。

生理活性物質の化学構造を種々の分析機器を用いて推定します。構造決定は化学構造式という曖昧さを含まない答えを導き出す必要があるので、ある機器分析の結果から推定した部分構造と他の方法から得られた結果が矛盾のないように、論理的に組み立てて行かねばなりません。立体化学を明らかにすることも重要です。

ある現象を司る生理活性物質が単離され、化学構造が明らかになると、その先は色々な展開が考えられます。

生理活性物質が生物体内で合成されることを「生合成」、その代謝変換の経路を「生合成経路」と言います。生合成を調べることにより、どのようにすれば生物現象を人為的に制御することができるか、生理活性物質を効率的に生産させるためにはどうすればよいか、などを明らかにすることができます。
 生理活性物質は生物体内では酵素によって生合成されます。そこで、遺伝子操作の手法も用いて生合成経路やその調節のメカニズムを解明する研究を行っています。

生理活性物質を微量で分析する技術が開発できれば、その生理活性物質が、たとえば、植物体のどの部分に多く存在するか、成長のどの段階で蓄積するか、などを調べることができ、次の「作用機構」の解明に役立ちます。

生理活性物質がどのようなメカニズムで作用を示すかを明らかにすることで、ある生物現象に係わる生理活性物質の解明の研究は完成します。

研究の最初と最後は「生物学」の、生理活性物質の「精製・単離、構造決定、有機合成」には「有機化学」や「分析化学」、「生合成」の研究には「生化学」の知識が必要とされます。最近は、「有機化学」や「分析化学」的な手法とともに、「分子生物学」の手法も取り入れています。  また、大量の材料から微量の生理活性物質を単離するには、最初の段階ではたくさんの試料を処理するので体力が、最終段階では微量物質を扱う繊細さが要求されます。このように、色々な能力が必要です。