質問やご意見に対する解答
10月 4日クラス
質問と回答
植物生理学の参考書を知りたい
基本的に細胞レベルの構造や呼吸などの基本的なメカニズムは動物と共通です。(生物学では「違い」に注目しがちですが、生物にとってとても大事な部分は共通の場合が多いようです。)従って、Molecular Biology of The Cell 4th ed. (Garland)および和訳書等は良い参考書です。この他、植物に特徴的なことを述べた本として、植物生理学(Mohr and Schopfer、網野真一訳)シュプリンガー、植物生化学(Heldt、金井龍二訳)シュプリンガー等がお勧めです。植物病理学関係では、Plant Pathology and Plant Pathogens 3rd ed. (Lucas)Blackwell、Plant Pathology 4th ed. (Agrios) Academic Pressが良いでしょう。一度見てみたければ、有江までお知らせ下さい。
図の順序がプリントと授業で同じ方が良い
申し訳ありません。プリントを昨日作成し、その後、植物の病気をもう少し丁寧に解説した方が良いか、と思いつきでスライドを追加修正したので順序が変わりました。この件についてお断りしするのを忘れていましたので、分かりにくかったかと思います。次回は一致させる予定です。
Aspergillus flavusとコウジカビ(Aspergillus oryzae)は近縁であるが、過去にコウジカビがアフラトキシンを産生して被害を及ぼした例は無いか?
日本で産業に使用されているコウジカビには、アフラトキシンを生産する物はない(なかった)と聞いています。詳しくは、応用生物科学科の竹内道雄先生にうかがってみてください
10月 11日クラス
質問と回答
生物防除はあまり普及していないのでは
生物防除の多くは、環境条件次第で期待する効果が得られないことが多いなど、十分に農家の期待に答えられない部分があり、そのうえ、これまでは多くの生物防除が試験的、あるいは伝承的な適用に限られていたため、あまり普及していなかったのは事実です。しかし、近年、生物農薬としてきちんと登録されるものも増加し、上手に使用できるものについては今後は使用が拡大すると考えられます。
殺菌剤の菌に対する特異性は絶対か?
「ない」ことを証明するのは不可能(あることを証明するのは1つ事例を見つけるだけで良いのですが)ですので、菌に対して高い特異的殺菌性を示す薬剤が、動物や植物に殺菌性を持たない、ということを証明することはかなり難しいと思います。しかし、前の文でも分かるように、特異性は、ある、なし、ではなく、高い、低いの問題ですので、菌に対して殺菌性が高く、(基準に従って試験した)他生物に対して効果がほとんど見られない場合は、特異性が高いと言えます。そもそも、「危険」、「安全」も絶対値ではなく、比較であることを考えてみてください。
病害を防ぐには殺菌性の薬剤より、ワクチンが良いのでは?
今日紹介したプラントアクチベーターは、化学物質ですが、ワクチンの様な作用性が期待されます。また、生物防除資材のうち、非病原性菌や、弱毒ウイルスもワクチン用効果を期待して使用されます。今後、研究及び実用が増加していくことと思います。
農薬として植物ホルモンを使っては?
植物ホルモンは、植物の成長に影響(悪い場合も)を与える場合も多いので、実際にはあまり使用できないかと思います。ただし、事例としては、コブの形成に必須のオーキシンに対する反活性を持つエポキシドンという物質を用いて、根こぶ病を防ぐことができる可能性については、我々が報告しています。論文も出していますので、興味をもたれた場合は、見に来てください。
植物と菌は、共通に細胞壁を持つが、これを系統進化で考慮する必要はないのか?
植物の細胞壁(セルロース)、菌の細胞壁(キチン、グルカン等)と物質的に異なりますので、「細胞壁を持つ=近縁」とは考えられないようです。