講義で使用する/したスライド等のpdf(カラー)をこちらからご覧いただけます。
小テスト回答のヒントは、平成15年度の「病原微生物学:質問に対する回答など」をご覧下さい。
質問に対する回答など
10月15日クラス
質問と回答
生物的要因による障害と物理的・化学的要因による障害が似ているときはどのように識別するのか?
10/22にご紹介する「コッホの原則」に従って調査をすることで、要因を調べます。生物的要因の場合は障害が生じた植物から要因が分離される、あるいは見出されることが期待されます。物理的・化学的要因の場合は、障害が生じた植物から要因を見出すことは困難で、事前に可能性を知っておく(例えば、誤って除草剤をかけたかもしれない、寒さに触れたかもしれない、など)ことが重要になります。いずれの場合も、障害の再現実験で要因を明確にすることを試みます。
「達成可能な収量ライン」を「理論的最大収量ライン」に近づけることは可能なのか?
講義の中では、植物保護関係の学問や研究の1つの達成目標は、「現実の収量」を、病害防除などによって、「経済的収量」に持っていくこと、さらに、「経済的収量ライン」を「達成可能な収量ライン」に近づけることであるということをご紹介しました。例えば、植物工場が無菌室であり環境制御が最適化でき、かつ、その運転コストが無視できるほど小さいのであれば、「経済的収量ライン」を限りなく「達成可能な収量ライン」に近づけることができると思います。ただし、ご指摘の、「達成可能な収量ライン」を「理論的最大収量ライン」に近づけることは、まだ科学でも理解できていないこと(例えば、ある植物にとって最適な生育環境はどのような条件であるか、など)に関係するので、困難であろうと思います。あくまで概念での話であるとご理解ください。
菌のように肉眼で見えるものも微生物なのか?
ご紹介したように、「微生物」とは、肉眼で見えないような小さな生物を表す言葉で、生物の種類を表す言葉ではありません。そのため、「微生物」に何を含むかの定義はなく、個々で異なった判断をしています。本講義では、「微生物」による植物の生育障害を「病気」とし、その原因となる「微生物」としてとりあげるのは、「菌(クロミスタ等含む)」、「細菌」、「ウイルス・ウイロイド」、「線虫」とします。「菌」などは分類体系でほぼ正確に定義されています。10/22に、「菌」の定義などはご紹介します。また、「菌は、「きのこ」のような肉眼で十分見える形もとります。
10月22日クラス
質問と回答
「殺菌剤」は菌だけでなく、細菌やウイルスなども殺すのか?
植物病害防除用の農薬に関しては、1月の講義でご紹介する予定です。植物病害の多くが菌によって引き起こされるため、病害防除用の農薬が「殺菌剤」と呼ばれすることが多いですが、作用メカニズムから見ても、菌に効果的な薬剤は菌のみ、細菌に効果的な薬剤は細菌のみ、という特異性があるのが普通です。ただし例外もありますし、1月の講義でより詳しくご紹介します。また、残念ながら、現状、ウイルスに効果的な薬剤は殆どありません。
講義で紹介された「絶対寄生 obligate parasite」は「biotroph」と同じ意味か?
「biotroph」は、宿主植物組織を殺さずに生かして栄養を取る様式、これの対語として「necrotroph」は、宿主植物組織を殺して栄養を取る様式を示します。一方、講義でご紹介した「絶対寄生 obligate parasite」は生きた植物上でのみ生活できること、「腐生 saprophytic」は死んだ生物(=有機物)上で栄養を取れること、を示します。類似の概念ですが、前者は植物に寄生する際の様式、後者は栄養を取る様式をしめします。
まだ未分類の微生物、発見されていない微生物が地球上に存在するのか?
どちらもたくさん存在します。たとえば、通常、菌や細菌は培地で培養しますが、培養できないものは従来は見つかっていませんでした。しかし、近年は、土壌等の環境からDNAを抽出して解析することで、このような微生物の存在が見出されるようになっています。
10月29日クラス
質問と回答
「変異」は新しい種の出現に至るのか?
「変異」には多様なものがあります。遺伝子の一塩基変異、遺伝子領域の欠損、さらに、染色体のアレンジや欠損などがあります。変異が新たな形質の出現につながることもあります。変異によって起きた新たな形質が、選択や隔離によって固定された集団となり、もとの集団と生殖隔離などが起きた場合には、新たな種として理解される場合もあります。
植物の免疫機構を突破できる菌が植物病原菌になると考えられるが、そうすると、現在病原菌でないものが将来病原性を示すようになる可能性はあるのか?
病原菌がどう進化して出現してきたか、に関わるご質問で、大変興味深いと思います。私どもは現在重点的に研究しています。現在病原菌でないものが将来病原性を示すようになる可能性はあると考えられます。
ツボカビや接合菌は、子嚢菌や担子菌に比べて植物病原菌が少ないのか?
講義でご紹介した表ではその様になっています。ただし、病原菌でないものも含めて、ツボカビや接合菌は、子嚢菌や担子菌に比べて種数が少ないようです。
菌が異核共存状態を保つ意義はあるのか?
例を次回ご紹介します。
11月 5日クラス
質問と回答
純水をかけて先端が破裂した菌糸はその後どうなるのか?
講義でご説明したように、隔壁孔がウォロニン小体で塞がれ、下流(菌糸が伸びる元)側の菌糸細胞はダメージから逃れますので、そこからまた分枝して新たな菌糸が生じるものと考えられます。
「かび」が「きのこ」に形を変えるとき、何が起こっているのか?
「かび」と「きのこ」、「酵母」と「かび」などの形態のスイッチングのメカニズムには大変興味が持たれ、研究がされていますがまだ未解明の部分が多く残っています。講義でご紹介したように、子嚢菌が有性生殖を行い、子実体を形成する際には、交配型の異なる菌株の存在、交配型遺伝子産物やフェロモン、細胞膜上の受容体やリン酸化などの信号伝達、cAMP経路などの関与が報告されていますが、まだ未解明です。これがすべて明らかになると、交配しない菌を交配させたり、マツタケの子実体を人工的に形成させたりできるようになることが期待されます
「偽有性生殖」が「有性生殖」に比べて有利であると、菌は有性生殖を行わなくなるのでは?
植物病原菌や産業に使用される菌(コウジカビ等)が交配しないのはそれが原因であり、偽有性生殖で十分に必要な多様性を維持できるのでは無いかと考えられています。
生活環において有性生殖と無性生殖はどうなっているのか?
生活環を御覧ください。概ね、生殖について記述があり、さらに、核相を追記してあります。次回の講義で再度ご説明します。
根こぶ病にかかっているハクサイのこぶの細胞の中はほとんど休眠胞子だけなのか?
成熟するとほぼ休眠胞子だけになるようです。生活環にあるように、成熟するまでは、核分裂のみをして細胞分裂をしない高くアメーバー状でいます。「休眠胞子はどれくらい生存するのか?」とのご質問をいただきました。土壌中(圃場)で10年以上生存するとされています。
根こぶ病菌の休眠胞子はどのように宿主(アブラナ科)を認識しているのか?
アブラナ科植物の根部からの浸出液中の物質を認識すると言われていますが、まだ物質レベルの同定は終了していません。「その物質を作らないアブラナ科植物をつくれば根こぶ病の制御が可能ではないか?」とのご質問をいただきました。その可能性はありますがまだそのような品種は育種されていません。
根こぶ病が発生した圃場にダイコンを作ればよいのでは?
作型が合えば1つの選択肢だと思います。根こぶ病が発生しない、レタス、ダイコンなど、その土地でその時期に、同じような設備で栽培・生産ができる植物を栽培することで根こぶ病の回避が可能であると思います。「現在はどのような防除が行われているのか」とのご質問をいただきました。土壌に殺菌剤を混和する、抵抗性品種を栽培する(抵抗性が不十分な場合が多い)、移植栽培を行う、等の防除が行われています。
11月19日クラス
質問と回答
べと病菌のように遊走子を形成する病原に対して雨除け栽培が有効なのはなぜか?
遊走子は主に水で伝搬される場合が多いため、雨滴などが植物にかからないように、キュウリやブドウでは雨除けやハウスを利用することがあります。
サツマイモ軟腐病はどの様に防ぐか?
サツマイモ軟腐病は、Rhizopus sp.による病害です。講義でご紹介したように、圃場で感染あるいは付着し、収穫した塊根(いも)で発病します。収穫後に発生するため、使用可能な農薬はありません。一時的に比較的高温高湿な条件に塊根を保つことをキュアリングと呼び、傷口などのコルク化を促進し、軟腐病の感染を制御することが行われています。
マコモタケの黒穂病菌も種子伝搬性か?
講義での説明が不十分でもうしわけありません。通常、マコモは種子形成まで至らず、株が土壌中に残って翌春に新たに萌芽します。この苗が黒穂病菌に感染しているとマコモタケが生じます。したがって、マコモタケの生産には、黒穂病菌に感染している苗を継代して使用します。「マコモタケの内部に黒い部分ができる前は黒穂病菌はどうしているのか?」という質問もいただきました。黒く見える部分では黒穂胞子を形成していますが、白色の部分は菌糸様で主に細胞間隙に存在しています。
11月26日クラス
質問と回答
植物病原菌の胞子は風で飛ばされるのが主なのか?
植物病原は、風、雨、水流、昆虫、菌などによって媒介されます。11/19の講義でもご紹介したように、根こぶ病菌、べと病菌は、水流や雨滴で伝搬されることが多いようです。一方、さび病菌の胞子は風で運ばれやすいようです。「ナシ赤星病菌はなぜ、春の雨の日の翌日に飛ぶのか?」というご質問をいただきました。気温が上がって来たときに降る雨がビャクシン上の冬胞子堆を膨潤させ、担子胞子を形成し、それがその後の晴れた日に風で飛ばされると考えられます。
ナシ赤星病菌などが宿主交代をする利点は?(複数)
複数の同様なご質問をいただきました。ナシは落葉植物ですので、冬の間常緑であるビャクシン上で暮らすことが有利であると言いたいところですが、ではなぜずっと(春も)ビャクシン上で暮らさないのか、と聞かれそうです。中間宿主がなくなると大変不利ですので、どうしてこのようなしくみを獲得したのか、不思議です。
12月10日クラス
質問と回答
いもち病に対する感受性のMは何を意味するのか?
中程度感受性を意味します。非常に弱いか、完璧に抵抗性か、の中間であることを示します。あまり強くない抵抗性因子を複数保つ場合などにみられます。「イネいもち病菌は、野外では交配をしないということは常に核相=nなのか?」というご質問もいただきました。そのとおりです。
イネばか苗病菌が花器感染するとどうして汚染種子ができるのか?
単子葉植物の場合、穎花がそのまま穎果になりますので、花器感染すると汚染種子になります。ばか苗病菌の場合、種皮に感染していることが多いようです。「ばか苗病防除のために種子消毒を行うのか?」というご質問もいただきました。講義でご紹介したように、化学殺菌剤や温湯による種子消毒を行うことが一般的です。生物農薬を用いる場合もあります。「ばか苗病に感染したイネが穂をつけないのはジベレリンの作用か?」というご質問もいただきました。ジベレリン直接の作用ではなく、ジベレリンの影響で黄化・徒長した植物体が、出穂前に越ししてしまうためだと思われます。
Fusarium oxysporumはすべて土壌感染か?
土壌伝染病として有名ですが、胞子が飛んで果実の傷口から感染する場合などもあります。「萎凋病抵抗性のトマトでは、萎凋病菌はトマトの根部組織に侵入できないのか?」というご質問もいただきました。抵抗性品種でも、萎凋病菌が根の皮層まで侵入していることは時々観察できます。しかし、内皮を越えて、維管束部に侵入することはほとんど観察されず、これが抵抗性の原因だと考えています。「F. oxysporumの分化型の違いは何によるのか?」というご質問もいただきました。大変興味深いご質問です。講義で簡単にご紹介したように、まだ十分明らかになっていませんが、アクセサリー染色体に座乗するエフェクター遺伝子等によって決まっているのであろうと考え、現在解析中です。
植物はどのようにして病原菌に抵抗性を示すのか?
1月の講義でご紹介する予定です。
12月17日クラス
質問と回答
moodleに掲載されている図表がボケている
少し修正したものに置き換えました。それでもボケたものがあり、申し訳ありません。
病原性因子としてのオーキシンの産生について、「根頭がんしゅ病細菌のようにオーキシン生合成遺伝子を植物の染色体に導入してオーキシンを産生させる」のと、「アブラナ科野菜根こぶ病菌のように植物にオーキシンを産生させる」の違いがよくわからない
同様なご質問を複数いただきました。講義での説明が不十分であったと思います。申し訳ありません。後者(根こぶ病菌)は、元来、アブラナ科野菜が持っているオーキシン生合成能を賦活化することで細胞や組織におけるオーキシン量を増加させる点で、オーキシン生合成に関わる遺伝子を自ら植物ゲノムに組み込みオーキシン量を増加させる根頭がんしゅ病細菌とはメカニズムがことなります。
灰色かび病菌はどうして多犯性なのか?
多犯性の病原菌は、多種の植物の防御機構を打ち破ることができる能力を持つと理解することができます(1月12日にご説明します)。灰色かび病菌は、講義の中でもご紹介したように、ペクチナーゼなど植物細胞壁関連成分の消化に関わる酵素を分泌して植物組織を崩壊させて進展します。この分解酵素は、多くの種の植物の静的防御壁である細胞壁などを分解するため、様々な植物に灰色かび病が起きると考えています。
菌核病菌のように子のう胞子を飛ばして伝染する病害はどうやって防ぐ事ができるのか?
化学殺菌剤の使用であれば、子のう胞子が飛散し、感染する時期(春先など)に、感染しやすい部位に殺菌剤がかかるように処理することで防除しています。
ネギ黒腐菌核病に感染したネギは好適条件にならないと腐敗症状を起こさないのか?
講義でお見せした、スーパー店頭での発病例では、黒腐菌株病菌の菌核か菌糸が付着、あるいは感染したネギを袋に入れて、湿度・温度条件が適合したため、菌糸を迅速に伸ばし、伴い、ペクチナーゼなどを分泌することで軟腐症状を起こしたと思われます。したがって、好適条件に置かなければこのような発病はしないと思いますし、細くなってしまいますが、感染している(例えば菌核が形成されている)最外葉を剥けば、その内側の非感染部位は食用にすることも可能です。
「生物的防除」は「化学的防除」より安全なのか?
一概にお答えすることができないご質問です1月21日、28日の講義で触れ、皆さんにお考え頂く予定です。
1月 7日クラス
質問と回答
タバコ野火病細菌はタバコ以外に野火病を起こせないのか?
タバコ野火病細菌が産生するタブトキシンはスペクトラムが広いですが、タバコ野火病細菌自体の宿主範囲がタバコに限られている(そのメカニズムを解析した論文はみつかりません)ため、タバコ野火病細菌はタバコ以外の植物には野火病を起こさないとされています
タバコ野火病細菌は、自らが生産するタブトキシンを代謝する酵素をつくるとのことであるが、それだと野火病を起こせないのでは?
タブトキシンは細胞外に分泌され、タバコに病徴を出します。タバコ野火病細菌は、自らの細胞内でタブトキシンを代謝しますので、分泌したタブトキシンには影響が及びません。
リンゴ等の火傷病細菌は、ミツバチなどの受粉の際に伝搬されるということであるが、これを防ぐためにミツバチを利用する以外の受粉方法は無いのか?
病原の生活感をどこかで妨げて病害の発生を防ごうという興味深いご提案です。実は、リンゴの受粉などは、我が国でも購入した花粉を利用してヒトが行うこともあります。興味深いのは、花粉に火傷病細菌が汚染していることもあり、対応が必要になっています。
1月12日クラス
質問と回答
シストセンチュウのように宿主範囲が狭いのはなぜか?
講義の際にご紹介したように孵化の際に、宿主植物が分泌する孵化促進物質の認識が必要であることが直接的な理由です。「なぜシストセンチュウが限られた宿主にしか感染しないようになったのか?」というご質問でしょうか?好適な宿主を見つけ、そこに感染することが他に感染するより有利なことがあったのでしょうが、具体的にどういう経緯だったのかについても報告は見当たりません。
新タマネギと貯蔵タマネギは品種が異なるのか?
貯蔵タマネギの多くは「黄タマネギ」と呼ばれる系統の品種です。これを早めに収穫し白い状態のもの、および、「白タマネギ」と呼ばれる品種とも、「新玉ねぎ」として売られます。
病原菌はプロヒビチンを分解するのか、生合成を止めるのか?
基本的には、プロヒビチンを分解します。「インヒビチンはなぜ前駆体で止まっているのか?」とのご質問もいただきました。安定な前駆体で蓄積していて、簡単な反応で活性(抗菌性など)を示すことが有利だったのだと考えられます。
1月21日クラス
質問と回答
コッホの原則で分離できない病原の場合は培養の代わりにどのようなことをするのか?
例えば、植物ウイルスであれば、多くのウイルスにかかりやすい健康な植物(タバコ等)に、罹病植物の汁液を接種、葉に形成される単離病斑(ローカルリジョン)を培地に単離したコロニーのように考え、その部分から再度汁液をつくり、元病徴を顕していたのと同じ種の健康な植物に接種して、現病徴を再現できるかどうか検定します。
メラニン合成阻害剤で侵入できなかったいもち病菌はイネの葉の上でどうやって栄養をとるのか?
基本的には、付着器から侵入できなかった場合、成長が停止、時に、分生子の他の細胞から発芽感を出して再度付着器を作ることがありますが、それも侵入できないとそのまま成長を停止している状態になるようです。
殺菌剤の開発で、種を特異的に殺菌するような剤はつくれるのか?そのコストは?
理論的には、種に特異的な酵素などの立体構造を認識する薬剤を作れば可能です。実際には、「種」というより同じ「作用点」を持つものがスペクトラムになります。コストは、剤によって、また、運によって、さらに、合成できるかどうか等によって異なりますが、その後の登録にかかる数十億円に及ぶコストは共通です。したがって、狭いスペクトラムの薬剤は、上市までにかかる開発費を回収するのが大変時間がかかります。
ミトコンドリア内膜のチトクローム複合体を作用点とする薬剤は、ストロビルリン系以外でも耐性菌が出現しているのか?
出現しています。ストロビルリン系薬剤は、複合体IIIのQoサイトを作用点とする薬剤ですが、複合体IIを作用点とする薬剤(SDHI剤)でも耐性菌が出現し、最近話題になっています。「チトクローム複合体の立体構造は生物によってどの程度違うのか?」というご質問をいただきました。講義でご紹介したように、この複合体を形成する4つのタンパク質の1次構造に起因しますので、その塩基配列を比較することでその差がわかりますし、分子系統解析に使用されています。ただし、ストロビルリン系の薬剤のスペクトラムで効果のある種では概ね共通の立体構造をしているため、そのQo部位に薬剤が結合すると考えられます。
酵素をターゲットとし、基質と競争的阻害を起こすような薬剤では耐性菌は出にくいのか?
酵素の活性部位に競争的に結合する薬剤を想定したご質問です。この部位に変異が起こると変異した酵素の活性が落ちてしまい、生育に影響がでるので、そのような耐性菌は出にくいだろう、というご質問ですね?変異の質にもよります。完全に生育できなくなるわけではなく、生育が遅延するような場合、フィットネス(一般的環境での生育能)が低下することが考えられますが、薬剤の使用下では、変異株(耐性菌)が選抜されて優占する場合があります。しかし、薬剤の使用をやめると、フィットネスの弱い耐性菌の密度が低下し、感受性菌の密度が復活することがあります。一方、バリダマイシンA(1/28にご紹介します)は、トレハラーゼの、トレハロースとの競争的阻害剤ですが、これは40年以上使用されていますが耐性菌の報告がありません。
1月28日に定期試験を実施しました
試験は、以下の要領で行いました。
『試験に際しては、1月12日に配布したB4用紙(両面使用可)1人1枚を持ち込み可とします(未受領の方は有江までお越しください)。参考書、講義で配布したプリント、ノートなどは持ち込めません。試験前に講義のプリント・ノートおよび参考書を利用して勉強していただき、病原微生物に関する理解(記憶ではない)をしていただきたく思います。従って、細かい語句、名前等の情報については配布したB4用紙をご利用いただき、独自性のある答案をつくっていただくことを期待しています。』
図書館所蔵の教科書・参考書は、皆さんが閲覧できる機会を確保するために、長期間借り出ししないようお願い致します。
なお、成績の評価は、シラバスにもありますように、「授業出席回数(14回が最多)」+「試験評点(86点満点)」で行います。授業出席回数が「7」未満の者は試験の成績にかかわらずDと評価します。詳しくは有江へお尋ね下さい。
1/28は30分間弱講義を行い、その後60分間で試験を行いました。2/4に試験の解説を行うとともに、講義(最終回)を行いますので、ご出席下さい。
2018年度の試験問題と評価のポイント(304 kb pdf)