講義で使用する/したスライド等のpdf(カラー)をこちらからご覧いただけます。
小テスト回答のヒントは、平成15年度の「病原微生物学:質問に対する回答など」をご覧下さい。
質問に対する回答など
10月 2日クラス
質問と回答
マヤ文明ですでに圃場での単一品種栽培が行われていたのか?
当時の発掘品などから圃場でのトウモロコシ栽培が行われていたことは確かなようです。良い形質のものを選抜し、遺伝的に固定する技術も身につけていたようです。
「ボウバイザイ」とは何か?
「防黴剤」と書きます。カンキツなどの収穫後の果実などの菌による病害の防除に使用されるいわゆる殺菌性の物質です。日本では収穫後に基本的に農薬を使用することはできないので、輸入カンキツ類では食品添加物として防黴剤を使用することになります。東京都の食品安全情報を参照ください。
以前は土壌病害に対してどう対応していたのか?
農薬が広がる前は、転作、天地返し(下層土と表土の入れ替え)、抵抗性品種の利用(数少なかったと思われるが)等の主に耕種的方法が行われてきたと考えられます。その後、メチルブロマイドやクロールピクリン、D-D等の土壌燻蒸剤による土壌消毒をメインとする化学的方法、太陽熱消毒や熱水消毒などの物理的方法、表土の入れ替え、天地返し、輪作、抵抗性品種や台木の使用などの耕種的方法が行われるようになりました。現在は、メチルブロマイドが使用できなくなりましたが、クロールピクリンなどによる土壌消毒はなお主要な土壌病害の防除方法です。最近は、環境負荷の低減のため、土壌還元消毒なども行われる様になってきています。詳しくは講義の中でご紹介していきます。
10月16日クラス
質問と回答
様々な微生物のうち何が最も重要な病原か?
簡単にお答えできない難しいご質問です。第1回でご紹介したように、人間の飢饉など歴史に残るような被害を起こした病原としては、ジャガイモ等疫病菌、イネいもち病菌、イネごま葉枯病菌、メイズモザイクウイルス、トウモロコシごま葉枯病菌等がありました。植物の病気の80%位は菌によって引き起こされているとも言われます。
病原が長期間生存するとのことだが死滅しないのか?
病原の中には土壌などでたくさんの胞子などを形成、休眠状態で長期間生存するものがあります。一気に発芽して環境の悪化や宿主植物の不在で死滅してしまうことを防ぐために、例えば少しずつ発芽する、あるいは、宿主植物を認識して発芽するような生物としての生存戦略をとっていると考えられます。もちろん、少しずつは発芽し、あるいは捕食され、死滅しますが、全滅はしないで長期間残存します。4回目の講義でアブラナ科根こぶ病菌を例にご紹介します。
エンドファイトは植物組織のどこにいるのか?
エンドファイトendophyteは、植物組織内生微生物のことを言います。その種などによって生存場所は異なります。厳密には、組織内部に生存して植物の成長とともに菌糸を伸長するなどの成長をし、共生関係(相互にマイナスが無い)結び、種子などを通じて垂直伝搬(次世代でも共生すること)する微生物のことで、この場合、組織の細胞間隙で共生する場合が多いようです。ただし、最近は組織表面にいたり、垂直伝搬しないものもエンドファイトと呼ぶようです。
培養できない絶対寄生の病原の同定はコッホの原則でどのように行うのか?
講義でご紹介したように、培養できない病原として、うどんこ病菌、べと病菌、根こぶ病菌、ウイルスなどを挙げることができます。これらが病原であることをコッホの原則に準じて示すにはどうしたら良いでしょうか?考えてみてください。(練習問題にあります)
10月23日クラス
質問と回答
菌の分類はDNA解析によってできるが、昔は何を基準にしていたのか?
もともと分類は形態の差に基づいて行われてきています。有性世代を持つものは、子実体や有性胞子の形態、有性世代を持たないものは、分生子などの形態や形成様式に基いて分類されてきました。現在でも、本来の分類は形態に基づいており、分子分類は参考データとして扱われます。
菌にもアルビノが存在することを知って驚いた
色素生産の欠損変異株(個体)をアルビノと言います。菌は、菌類メラニン(黒色)などの色素を作りますので、その生合成に係る遺伝子の変異などでアルビノ株が生じます。また、薬剤で生合成に係る酵素を阻害することでアルビノの性状を示す場合があります。
異核共存体が持つ2つの核の染色体には似た部分は無いのか?
基本的に同じような染色体を持つ2つの核が1細胞に入っている状態です。有性生殖を行うことができる菌では、n+nの異核共存体が条件が整うと核融合して2nになり、その際に、相同染色体が対合することからもわかります。
有性生殖を行う子嚢菌の細胞には雄と雌があるのか?
その通りです。交配型が異なる同種の2細胞がそれぞれを認識、どちらかが雄、あるいは雌として交配に至ります。
擬有性生殖で染色体の不当分配に依ってなぜ単相化できるのか?
不当分配で2n+1と2n-1の細胞ができます。このうち、2n-1の細胞から不当分配に依って、2n-1+1=2nと2n-1-1=2n-2の細胞ができます。さらに、2n-2の細胞から、2n-3の細胞が、という、繰り返しで、2n-n=nの細胞ができ、単相化するとされています。
有性生殖を行わないのにウイルスはどうやって新型をでつくれるのか?
講義で使用したスライドの11枚めにあるように、宿主細胞内でのRNAの組換えや変異によって新型が生じます。
11月 6日クラス
質問と回答
完全世代を持つ子嚢菌はどうして不完全世代名を持つのか
不完全世代、すなわち、分生子や菌糸の形態などに基いて分類・学名が命名されることが多かったため、不完全世代名を持つ場合があります。
「ハクサイ葉こぶ病」の病原は何か?
申し訳ありません。話し方が良くなかったかもしれませんが、「葉こぶ病」は正式な病名ではありません。根こぶ病菌が葉に感染してコブ状になったものですので、病原はネコブカビ(Plasmodiophora brassicae)です。葉にこぶができている状態を根こぶと呼ぶのは妙なので、葉こぶと呼ぶばあいがあります。
アブラナ科野菜根こぶ病菌の休眠胞子は長日で発芽するのか?
これも話し方が良くなかったようで申し訳ありません。長日条件でこぶが形成されます(病徴発現)。詳細は不明ですが植物ホルモンが影響するため短日条件では瘤ができにくいとされています。
アブラナ科根こぶ病の発病抑制のために反オーキシン活性物質を処理しても植物の成長などに影響は無いのか?
処理するのは根部のため、地上部に直接的な影響は無いのではと思います。未だ調べていません。
ネコブカビ類やツボカビ類はどうやってウイルスを媒介するのか?
ネコブカビ類やツボカビ類などの表面に付着、ネコブカビ類やツボカビ類が植物組織に侵入する際に感染するとされています。
11月20日クラス
質問と回答
接合菌の胞子の表面の模様は病原性などの機能に関与するのか?
接合菌に拘らず、菌の胞子(分生子)の形、大きさ、色、表面構造などが病原性その他の機能とどんな関係するのか、ほとんど報告がありません。厚壁胞子の様に、肥厚した胞子は生残性が高く、耐久器官として働くことがありますが、機能が知られている少ない例です。表面の溝やスパイク状構造は、疎水性などに関与するため、水への分散や水面浮遊、飛散などの機能との関連が推定されている場合があります。
菌糸に隔壁があるとどのような利点があるのか?
菌糸の構造でご説明したように、隔壁で挟まれた菌糸領域が1細胞であると理解されています。菌糸が切断された際などに隔壁がある方が有利だと言われていますが、隔壁を持たない接合菌あるいは卵菌なども生物として生き残っているわけですから、菌糸が切断された際の補修機構などを持っていると考えられます。
担子菌は異核共存状態の菌糸の隔壁形成でなぜかすがい連結を作らなくてはいけない場合があるのか?
かすがい連結を作る場合でも異核はほぼ同調して分裂するとされています。子嚢菌がかすがい連結をつくらずとも異核の分裂が同調的に行き、親と娘細胞に異核が配置されるのに対し、担子菌ではかすがい連結を作らなくてはこれがうまくいかない場合があります。より異核同士の認識が強いからではないか、担子菌では異核の分裂の際に赤道面に異なる核の染色体が並びにくいから、などとされています。
さび菌の胞子(担子胞子や錆胞子)はどうして遠くまで飛ぶのか?
比重が軽く、かつ、水滴などではなく、風で遠距離を飛ぶからと考えられています。
さび菌で異種寄生をするようになった経緯は?(複数)
宿主植物が例えば落葉して休眠する期間に生活する場所を確保するため(ナシービャクシンを想定してください)とされていますが、他の種であっても良い関係であり、そう簡単に説明できません。「コムギ黒さび病菌やユリ類さび病菌は、どうしてコムギやユリの上で、夏胞子と冬胞子の2種類の胞子を作るのか?」というご質問も複数頂きました。これも大変解答が困難なご質問ですが、夏胞子は拡大に、冬胞子は耐久とその後の担子胞子形成(核融合→(染色体組換え)→減数分裂)に備えており、機能が異なると考えることが可能です。
11月27日クラス
質問と回答
ウイトラコチェ(トウモロコシ裸黒穂病菌の黒穂胞子が形成されたトウモロコシの穂)のようにマコモタケの中にも黒穂胞子が形成されるのか?
マコモタケも時間が経つと黒穂胞子が成熟し、黒色の(炭のような)斑点が内部にできます。黒穂胞子が成熟したマコモタケは品質が劣っているとされます。
イネ紋枯病菌の菌核は風で飛ばされることは無いのか?
あるとされています。冬の乾燥期等に、土壌などとともに風で飛ばされることも拡大要因とされます。
子嚢菌の子嚢形成は、裸生子嚢→子嚢盤→子嚢殻→閉子嚢殻と進化してきたと考えてよいのか?
子嚢を守るという観点からはそのように考えて良いと思います。閉子嚢殻は耐久性が高いですが、Taphrinaの裸生子嚢では、子嚢の中で子嚢胞子が出芽し分生子ができるなど数を増やす機能を持っており、分生子が芽や小枝で越冬することで、耐久性を担保しています。
不完全菌類は分子系統解析などからすると意味のない分類群だと思われるが、どうしてそのような分類群があるのか?
先週にご説明したとおり、もはや「不完全菌類」というのは使用されない分類群です。ただし、完全世代を形成しない菌もおり、比較しやすい無性世代(分生子など)の形態で構築した分類体系が残っているため時に不完全菌名が使われる場合があります
12月 4日クラス
質問と回答
Fusarium oxysporumは菌株によって染色体数や核型が異なるのになぜ同じ種とされるのか?
種の定義によります。F. oxysporumは完全世代を形成しない(未発見)のため、分生子の形態や形成様式、菌糸性状、厚壁胞子性状などを基準として種として定義されています。最近は分子系統解析に依っても近縁であることを確認できます。もちろん、これまでできなかった染色体数や核型が進むと分類が変わるかもしれません。しかし、F. oxysporumの核型は非常に近縁な菌株間でも異なり、さらに培養しているうちに変化する、一部の染色体を喪失、獲得、交換することが可能など、種の中でこれまで知られていなかった染色体数や核型の可塑性が明らかになっています。
スーパーマーケットで発生していた菌核病にかかった植物の写真を見たが、スーパーの野菜類は安全ではないのか?
圃場でも、輸送中でも、スーパーマーケットで保管中でも、家庭でもある程度の率で病気は発生します。この一部は圃場で感染あるいは付着した病原によるものです。このような感染・付着は一般的であり、特別なものではありませんし、特に危険なものでもありません。病気にかかった(腐ったという判断をするでしょうが)野菜類をあえて食べることをしなければ大きな問題はありません。感染していて発病していない、あるいは発病が軽微で気づかないような状況の野菜類を食べたとしても、毎日それを食べ続けることは無いでしょうし危険性は無いと言って良いと考えます。
イネいもち病菌の分生子の3細胞とも生きているのか?
生きています。核もあります。通常、このうち1つの細胞から菌糸を伸ばしますが、その後他の細胞からも菌糸を伸長する場合があります。
非病原力遺伝子とは?もっと詳しく知りたい
1月の、植物ー病原相互作用のところで詳しくご紹介します。
生物農薬の話を詳しく聞きたい。
残念ながら「植物病原微生物学」ではあまり時間をかけてご紹介する機会がありません。大学院に進まれるようでしたら、「植物病原微生物学特論」を履修していただければ詳しくご紹介します。その他の場合、有江までお越しください。
病気が発生した農家などはどこに、どのようにコンタクトするのか?人間の診療所、病院の医療システムのようなものはあるのか?。
通常、病害などが発生した場合、農家は農協の指導員、県の普及所(名前が異なる場合があります)の指導員などに相談、そこで多くの場合解決します。ここで解決しない場合は、県の農業試験場やさらに専門性が要求される場合などは大学や農林水産省関係の試験場に話が来る場合があります。東京大学や法政大学等では植物医科学として人間の医療システムのようなものを構築しようと努力されています。私は実際の圃場、そこで発生する病気、栽培者の方と、大学での学問の連携が大変重要だと思っていて、大切にしていますので、積極的に地方の試験場の研究者などにお願いをして現場をご紹介いただいたり、自から出かけて農家を訪問したりしています。サツマイモ黒斑病はなぜか農家の方から直接持ち込まれた(昔、農工大周辺にお住まいだったことから気軽に問い合わせ頂いた?)比較的まれなケースです。
12月11日クラス
質問と回答
キセニアが食用トウモロコシの生産などでは何を起こすか
植物病原とは関係ありませんが、、通常、果菜や果実の生産では、母方の性質が現れている植物組織を食用とすることが一般的です(トマト、キュウリ、イチゴ、リンゴなど)、。しかし、イネ科の穀類では主に胚乳部分を食用とします。すると、胚乳部分ではキセニア減少によって雄の性質が現れます。この雄(花粉)がどこから飛んで来るかわからない場合、胚乳で期待していない性質(たとえば、花粉が組換え体由来だと組換えで導入したタンパク質)が発現してしまう場合があります。ほぼ自家受粉のイネではほとんど問題になりませんが、他家受粉しやすいトウモロコシなどでは問題になります。
うどんこ病菌以外でも絶対寄生菌はグリーンアイランドを形成するのか?
いわゆる条件的腐生菌としてしられるさび病菌の中にはグリーンアイランドを形成するものがあります。しかし、絶対寄生菌でもべと病菌はグリーンアイランドを形成しません。病徴の発現メカニズムが異なっているためと考えられます。
細菌は菌に比べて小さいのに病原になり得るのか?
何をお答えできるかわかりません。次回の講義でご質問の趣旨などを伺い再度回答できればさせていただきます。「小さな病原故に観察よりも生化学的・分子生物学的解析がすすんだ」ことと関係がありますでしょうか?
12月18日クラス
質問と回答
ファイトプラズマは昆虫の体内でずっと生存し続けるのか?
ファイトプラズマに感染している植物の師管液を吸汁したヨコバイなどの昆虫では、ファイトプラズマが腸から取り込まれて血管に入り、唾腺に運ばれ、ここで増殖して、健全な植物を吸汁した際に伝搬されます。そのため、昆虫が生きている限り伝搬します。このような伝搬様式を永続伝搬と言います。ウイルスの昆虫による伝搬にも、永続伝搬、半永続伝搬(口針などを通じて昆虫の体内に取り込まれるが昆虫内では増殖しないため次第に希釈され伝搬しなくなる)、非永続伝搬(口針等の表面に付着するだけでそれがなくなると伝搬しなくなる)の3様式があります。
ファイトプラズマは自力で伝搬せず、ヨコバイなどの昆虫で媒介されるとのことなので、媒介昆虫を撲滅すればファイトプラズマ病は防除できるのでは?
ファイトプラズマは宿主範囲が広く、同様にヨコバイの吸汁する宿主範囲は広いとされています。ヨコバイ類は樹木などに生息することが多く、圃場の近隣の林などから飛来するため、殺虫剤による撲滅は不適当と考えられます。
線虫の雄・雌の区別はどのようにするのか?
線形動物ですので、卵嚢を持つか精巣を持つかで区別します。ただし、解剖しない時は、肛門の観察などによって区別します。
マツノザイゼンチュウの生活環をもっと知りたい
病原であるマツノザイセンチュウがマツノマダラカミキリに運ばれてアカマツ等に侵入、通導組織に異常を生じさせるようです。「マツ樹幹内で起きていること:線虫が感染するとなぜ枯れるのか(神戸大黒田研)」などを参考にしてください。
マリーゴールドのどのような物質がセンチュウを抑制するのか?
alpha-ターチニエールという物質であるとされています。マリーゴールドを含め、クリーニングクロップ(対抗植物)について詳しくは、「対抗植物、天敵微生物等を利用した線虫防除技術 (農研機構)」などをごらんください。
ネコブセンチュウは宿主植物のオーキシン産生を促進することでこぶを形成するのか?
その可能性があります。ネコブセンチュウに犯されたこぶで、オーキシンやサイトカイニン量が増加するとの報告があります。「ネコブセンチュウによるゴール形成に関する研究 (大阪府大)」などが参考になります。
1月 6日クラス
質問と回答
病原が植物を認識し接近するメカニズムに関する研究例が少ないのはなぜか?
講義でご紹介したように、ストリゴラクトンの例や、根こぶ病菌休眠胞子の発芽誘導因子など、土壌病原菌での研究例はありますが、研究が難しい面があります。ただし、茎葉病害のように、胞子などの偶然の落下など、植物を認識し接近するメカニズムに関係しないと考えられる病原(さび病菌、いもち病菌等)が多いことも原因の1つであると思います。
イネいもち病菌は分生子や付着器の周囲に水が無いと侵入できないのか?
そのとおりです。いもち病菌の感染が、梅雨時期や露の降りる夜間に起こることもそれが理由です。
トマチンはソラニンと同様に摂取すると中毒するのか?
トマチンは膜や酵素に対する影響が報告されていますが、ヒトに対する毒性が実際に問題になることはないとされています。
ナシ黒班病菌が産生するAK毒素の受容体を二十世紀ナシなどは持っているのか?
そのように考えられています。AK毒素の受容体は、細胞膜上にあることが示されています(Otaniら 1989)。
Gene for gene theoryに基づいて、病原のAVRが変異すると抵抗性遺伝子を持つ品種に感染できるレースが出現するとのことであるが、植物の抵抗性遺伝子が変異することでそのレースが感染できなくなることは無いのか?
AVRはもともと病原性に関する遺伝子で、それを植物が認識して抵抗性を誘導できるようになると考えられています。このような関係はZig-Zag modelと呼ばれ、病原と植物のいたちごっこと考えることができます(Mol Plant Pathol. 2014 Dec;15(9):865-70. doi: 10.1111/mpp.12210.)
バナナにかびが生えて収穫できなくなると聞いたが、そのカビもマイコトキシンを産生するのか?
バナナから分離されたFusarium属菌が多様なマイコトキシンを産生する報告があります(Appl Environ Microbiol 63:364, 1997)。ただし、圃場で菌による病害で収穫ができないのと、果実にマイコトキシンが産生されることは直接的にはつながらないように思います。最近圃場で問題になっているのは、Fusarium oxysporumf. sp. cubenseによるパナマ病とMycospaerella fijiensisによるシガトガ病です。
1月15日クラス
質問と回答
呼吸系の阻害を機作とする殺菌剤はなぜ多いのか?
呼吸を構成する一連の解糖系、クエン酸回路、電子伝達系と酸化的リン酸化の過程に関与する酵素やタンパク質がたくさんあるからであると理解しています。
作用機構の異なる殺菌剤を混合することで耐性菌を出さずに病原菌を根絶できないのか?
実際にそのような使用方法もありますが、殺菌剤が必ずしも100%の病原菌を殺すわけではありませんし、また、外から飛んでくる病原菌もあるため、耐性菌の発生リスクは残ります。
耐性菌が出ない殺菌剤の使用方法など専門家が農家に指導しなくてはならないのでは?
そのとおりです。農協の指導員や県の普及員、あるいは農薬販売会社等の職員が指導をする必要があります。本日配布したFRACの表はその際に、「機作の同じ薬剤を繰り返し使用することの無いよう」チェックするためのものです。
プラントアクチベーターは植物のどのような抵抗性を誘導するのか?
これまでに知られている、本日の講義でご紹介したプラントアクチベーターはすべて全身獲得抵抗性(SAR)を誘導するとされています。
プラントアクチベーターは良いことづくめに見えるがどうして余り普及しないのか?
講義でご紹介したように、イネいもち病用の薬剤としてかなり普及しています。40年以上に亘って使い続けられています。蔬菜類などであまり普及しないのは、効果が(狭義の)殺菌剤に比べて劣る場合があること、蔬菜類に、環境条件によって薬害を起こすことがあるからであろうと考えられています。
農薬のヒトに対する影響はどのように評価するのか?
医薬と違って、ヒトに処理をする薬剤ではありませんので、ヒトを使った治験ができません。そのため、動物実験で得た、影響のない値を1/100にしてヒトに影響のない値としています。この他、ヒトの培養細胞を使用した試験もあります。詳しくは、農薬工業会のHPなどを参考にしてください。
1月29日に定期試験を実施しました
試験は、以下の要領で行います。
『試験に際しては、 1月 6日に配布したB4用紙(両面使用可)1人1枚を持ち込み可とします(未受領の方は1月17日までに有江までお越しください)。参考書、講義で配布したプリント、ノートなどは持ち込めません。試験前に講義のプリント・ノートおよび参考書を利用して勉強していただき、病原微生物に関する理解(記憶ではない)をしていただきたく思います。従って、細かい語句、名前等の情報については配布したB4用紙をご利用いただき、独自性のある答案をつくっていただくことを期待しています。』
図書館所蔵の教科書・参考書は、皆さんが閲覧できる機会を確保するために、長期間借り出ししないようお願い致します。
なお、成績の評価は、シラバスにもありますように、「授業出席回数(14回が最多)」+「試験評点(86点満点)」で行います。授業出席回数が「7」未満の者は試験の成績にかかわらずDと評価します。詳しくは有江へお尋ね下さい。
1/29は30分弱講義を行い、その後60分間で試験を行います。2/5に試験の解説を行うとともに、講義(最終回)を行いますので、ご出席下さい。
試験問題(68 kb pdf)