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小テスト回答のヒントは、平成15年度の「質問に対する回答など」をご覧下さい。
質問に対する回答など
10月 1日クラス
10月 8日クラス
10月22日クラス
10月29日クラス
11月 5日クラス
11月19日クラス
11月26日クラス
12月 3日クラス
12月10日クラス
12月17日クラス
1月 7日クラス
1月14日クラス
1月21日に定期試験を実施します
質問と回答
施設栽培によって本来の季節が変わると植物はどのような影響を受けるのか?「旬」はどうなるのか?
施設栽培では、例えば花芽形成に低温感受を要求する植物に対しては、本来低温でない時期に低温条件で栽培することで花芽形成をさせるなど、本来の季節と異なる環境を設定することで植物を生理的に調節します。ご承知のように、植物は温度、日長、水分など多様な環境因子を感知しています。イチゴでは昔は苗を山上げすることで、現在は冷蔵庫に苗を入れることで花芽形成を誘導、クリスマス時期に収穫できるようにします。ご質問いただいた「旬」ですが、本来は「収穫が最も盛んな時期」という意味ですので、栽培方法によって旬が異なることになりますが、上記の例でのイチゴの旬はクリスマス時期ということになります。近年、「旬」は「美味しく食べられる時期」という意味でも使われるようになっていますが、味については、多面的に議論することが必要でしょうから、この講義では扱わないことにさせていただきます。
病気にかかった植物もギリギリ収穫できるのか?
もちろん、生産物の品質に大きな問題がないようでしたら(毒素蓄積、ファイトアレキシン生産、保存しにくい)、収穫することはできる場合はあります。例えば、写真でお見せしたハクサイ根こぶ病の場合などでは、症状が現れない個体は通常、出荷・販売に至ります。しかし、収穫できる個体数の減少や個体が小さくなったりするため、収穫量の減少が農家にとって被害となります。
高知で発生した萎凋病はどのように防除対策を講じたのか?
時間がありましたら講義で詳しくご紹介しますが、まずは発生している病害を診断する技術を構築、その診断結果に基いて、耐病性台木の使用、物理的(湛水)あるいは化学的(燻蒸)方法による土壌消毒等で対処しています。県、村、JA等と協力しながら農家に情報を伝えることで対処方法を検討します。
牧場、ゴルフ場等は耕地生態系ではないのか?
圃場と同様に人間が手を加えた生態系ですので、自然生態系であるとは言いがたいですね。植林地なども同様です、。
moodleからスライドをカラー印刷できない
2号館2階のPC室でカラープリンターを使用できると聞いていますので、できるだけそれをご利用ください。念のため、白黒印刷じたものを小数部持っていく予定です。テキストは配布します。
質問と回答
植物病原は次第に死滅していくのか?
植物病原は宿主植物の栽培等を感知して休眠状態を脱し、宿主植物に感染しようとします。この時、宿主植物にうまく到達できないと死ぬと考えられます。あるいは休眠中に他の生物等に侵されて殺されることもあります。そうして当初たくさん作られた休眠帯の数は減少していきます。講義でお示しした図は、この程度の期間まで生存することが確認された、という意味であり、その期間が過ぎると直ちに死滅することを示しているわけではありません。
歩行等の方法で移動する「きのこ」はないのか?
「きのこ」に根はありませんが、土中、植物組織中等に展開した菌糸から菌糸束を形成し、肉眼で容易に確認できるほどの器官となったものが「きのこ」です。菌糸束がつながっているために移動はできません。
絶対寄生菌は寄主植物が植えられていない季節はどう過ごすのか?また、どのように宿主に移動するのか?
絶対寄生菌は耐久体の形で残渣上や土壌中で宿主植物が植えられていない器官をすごします。宿主植物が栽培される季節になると胞子等を遅参させて宿主植物に感染します。「さび病のようないわゆる条件的腐生菌が野外で腐生生活をすることはあるのか?」とのご質問を戴きました。講義でお断りしたように、条件的腐生や条件的寄生は概念で、どの菌のどの状態が条件的腐生か、条件的寄生かなど、明確にすることは困難です。
Fusarium oxysporumの分化型を植物種に対する病原性の差以外で識別する指標はあるか?
子嚢菌の各論で少しご紹介する予定ですが、基本的に病原性以外の確実な指標はありません。しかし、近年病原性に関連する小型の染色体は病原性を決定していることが判明しており、一部で指標として使用できるようになってきています。「分化型は他の種でも報告されているのか?」との質問も戴きました。Fusarium solani等他種でも使われています。しかし、種以下の、とても植物病理学的基準での分類群ですので、使われているケースはあまり多くないようです。
トマト萎凋病菌では、レース1〜3しか見つかっていないのか?
現状では、レース1〜3のみです。理論的にはトマトに導入されている抵抗性遺伝子I3に対応する非病原力遺伝子(AVR3)の変異等に依ってレース4が生じる可能性が示唆されていますが、出現しないほうが良いですね。
質問と回答
マツタケは人工栽培できないのはなぜか?マツタケを人工栽培できれば安価でたくさん流通するのでは?
マツタケは培地上で菌糸状態で培養できるようになっているが、子実体(きのこ)の形成技術が構築されていないと聞いています。従って、マツタケの形がなくて良いならすでに人工培養できていると考えられます。形がなければ意味がないかもしれません。子実体を人工的に形成させることができるようになると、安価で流通量が増えるとは思いますが、季節感がなくなること、希少価値がなくなることなどを考えると果たしてそれが理想なのでしょうか?
「不完全菌」の分類群はどうなったと考えたら良いのか?
基本的に、担子菌あるいは子嚢菌に分けて所属されたとお考えください。
「胞子」と「分生子」は何か、再度聞きたい。
小学館「SPED EOS」によると、「胞子:spore」は菌糸などとは異なる形態をとる、特殊化した、小さな増殖器官で、無性生殖や有性生殖の結果形成される。と、「分生子:conidium」は菌糸や分生子柄上に外生的に形成される無性胞子。と説明されています。
子嚢菌などの隔壁孔を細胞小器官が通るとのことだが、この孔のサイズは可変なのか?
逆に、細胞小器官が変形する(サイズが可変)と考えたほうが良いのではないでしょうか。
菌は先端細胞までどのようにしてトレハロースを運ぶのか?
トレハロースは高い水溶性ですので、水に溶けて隔壁孔などを通過して運ばれているようです。
ボロニン小体はどうやって動かされるのか?
細胞骨格によって移動すると考えられています。
異核共存の際、機能する核はどのように決定されるのか?
私が知る限り未知です。
異核共存の際、細胞分裂はどのように行われるのか?
子嚢菌では、細胞分裂と核分裂は同調することが多いようです。担子菌では、2種類以上の核が同調して分裂、娘細胞に移行することを嫌うようで、かすがい連結、が形成されます。
菌は核相(n)=1なのに有性生殖をするのがおどろきだった?
ご質問の趣旨がよくわかりませんが、菌の核相n=1の細胞は動物や植物の配偶子であると考えると、おかしくはないですね?
偽有性生殖についてもう少し詳しく聞きたい
了解しました。次回再度ご説明します。
質問と回答
ネコブカビは原生生物、疫病菌・べと病菌はクロミスタ、ツボカビは菌という理解で正しいか?
そのとおりです
根こぶ病菌休眠胞子の発芽率を上げると病害がどうして防除できるのか?
「発芽率をあげるような処理方法を見つけると、」ということですが、根こぶ病菌は土壌中に長期間休眠して、ハクサイなどのアブラナ科野菜が植えられるのを待っています。もし、休眠胞子を一斉に発芽させることができる薬剤があれば、ハクサイを栽培する前に処理してしまい、休眠胞子を発芽させてしまう、根こぶ病菌は絶対寄生菌であるため宿主が無いと死滅する、その後ハクサイを栽培すれば被害が出ない、という考え方です。
各論で紹介される菌の生活環が覚えられないのですが、、、
細かいところを記憶していただこうとは全く考えていません。本年度も例年通りの試験の方式を取る予定ですが、そこでは、指定した要旨でのメモの持ち込みを可とする予定です。頭に覚えきれないところをメモできるようにしています。講義で複数の菌の各論、生活環をご紹介しているのは、そこに興味深い菌と植物の相互作用、菌の生態、重要な伝搬様式などがあるからです。それをヒントに、病害の防除ができるのではないか、等の考察をしてください。すなわち、各生活環などは、記憶していただくためではなく、理解して考察していただくことを目的に提示しています。講義でもそのような見方をお伝えしているつもりです。試験も、そこを重視して評価します。
Polymyxa属やOlpidium属が植物ウイルスを媒介するメリットはあるのか?
(この質問、たくさん戴きました、が、)メリットもデメリットも報告されていないようです。
Polymyxa属やOlpidium属が植物ウイルスを媒介する際、植物組織に入り込むのか?
入り込みます。植物病原菌のように組織や細胞に入り込みます。プレゼンセット3の、36、61〜62番のスライドをご参照ください。また、「植物組織に入り込む=病原性があるのではないのか?」とのご質問を戴きました。1月になってから詳しくご紹介しますが、植物病原が病気を成立させるためには、「認識→付着→侵入→進展→発病」等の過程をすべて達成せねばなりません。従って、植物組織に入ることはできても病気を起こさない微生物も存在しますので、「植物組織に入り込む≠病原性がある」です。
Phytophthora infestansの系統とは何か?
講義でご紹介した系統は、分子系統を示します。
Phytophthora infestansのsporangium(遊走子農)が、遊走子農として働いたり、分生子として直接発芽するのはなぜか、また、どう調節されているのか?
私が知る限り未知です。
「べと病」の「べと」の意味は何か?
梅雨等湿度が高い時に発生しやすく、その際に罹病部がやや軟腐的にべとっとなる病徴を示すことから病名がつけられ、その病気を起こす病原名として使用されていると考えています。
べと病菌は絶対寄生菌で培養できないとのことだが、実験を行うときは常に採集に行くのか?
常に植物の上で継代して病気を起こさせていることでいつでも使えるようになります。コッホの原則で、培地を使用する代わりに、宿主植物を使用するのと同じだと考えてください。
植物病原はどのようなときに植物ホルモンを利用するのか?
植物病原は、ジベレリンやオーキシンなどの植物ホルモンを病原性因子として使用する場合があります。詳しくは1月にご紹介します。講義でご紹介した根こぶ病菌は、オーキシンをアブラナ科野菜の根部に生産させて、細胞を拡大、内部にたくさんの休眠胞子をつくるとされています(その結果、その部分が大きなこぶに見えます)。
アカパンカビの様に耐熱性のかびはいるのか?
たくさんいます、植物病原菌とはあまり関係ありませんが、、。加熱後食品でかびが生える例などが良く報告されます。インターネットで、食品事故+耐熱性かび などのキーワードで検索してみてください。たくさんの事例や報告、論文がでてきます。
植物病原菌は動物(ヒト)に病原性は無いのか?
ほぼ無いといって差し支えないでしょう。免疫不全の動物に菌が感染する例がありますが、植物病原に限るわけではなく多様な菌が感染します。ただ、植物についていて通常は何の問題も無いが免疫不全の方には危険だという可能性は否定できません。また、直接動物に感染するわけではありませんが、植物病原やその他の菌が植物、特に穀類、豆類等に付着し、毒素(マイコトキシン)等を産生して動物(ヒトも)に被害を及ぼす場合があります。植物病原性とマイコトキシン産生能の関係はほとんどありませんが、このような危険性のある菌はきちんと防除しておくことが必要です。
質問と回答
ネコブカビの休眠胞子が発芽しにくいのに休眠胞子同士の相互作用は関係していないか?
興味深いご質問です。例えば菌でも、胞子がたくさんあると発芽阻害がかかる場合があります。特に最近では、近年クオルモンという、集団の密度に基づく機能を調節するのに機能する物質があることが報告されてきています。根こぶ病菌の場合は、そのような物質は報告されていませんが、洗浄した休眠胞子が単独でも発芽率が低いことが知られていますので、あまり密度効果は無いかもしれません
接合菌はどれも仮根(rhizoid)を形成するのか?
説明不足で申し訳ありません。rhizoidを形成するのを特徴とするのがRhizopusで、その他Mucor等は仮根を形成しません。
ブルーチーズの菌も接合菌か?
いいえ、子嚢菌のPenicilliumです。Penicilliumの中にも。酵素産性能が高い菌がいます。チーズ製造では、プロテアーゼ産生能が高い菌が良く使われます。
「宿主交代」はさび病菌にとってメリットは無いのでは?
大変お答えするのが難しい質問です。例えば、ナシ赤星病の場合、ナシは落葉樹であるため、冬の居場所として針葉樹のビャクシンの上の方が住処が確保される、などということは可能ですが、正しいかどうでしょうか。
夏胞子と冬胞子は文字通り夏と冬に形成されるのか?
夏胞子と冬胞子は文字通り夏と冬に形成される場合もありますが、必ずしもそうでない場合もあります。アマナでは、冬胞子と夏胞子が春に同時に見られます。
「花器感染」と「種子伝染」の違いは?
「花器感染」は病原が花を経由して植物体に侵入などすること、「種子伝染」は、病原は種子を経由して次世代に伝えられること、を意味します。
花器に病原が感染しにくくなっているような種はないのか?
私が知る限り未知です。
黒穂病に感染したコムギが大きくなったり、トウモロコシやマコモで肥大するのはなぜか?
植物自体のホルモンレベルを変化させるためと考えられていますが、正確なデータは見たことがありません。。
メキシコのトウモロコシ裸黒穂や、マコモタケは黒穂病菌を人工接種するのか
トウモロコシ裸黒穂は自然発生です。また、マコモタケは感染している苗を定植してつくります。
多犯性は植物病原菌とって有利か?
多様な植物種に感染できれば、有利な場合もあると考えられますが、病原力の強さなど他のファクターも考えあわせ音がなりません。
質問と回答
子嚢菌の分子系統解析をすることで、裸生子嚢から閉子嚢殻への進化がわかるのでは?
そのとおりです。過去に、そのような論文が出されています。この他、「子のう殻の形態は菌の生活環境に影響を受けるのか?」との質問を戴きました。子のう殻の形態は菌の系統や種によって決まっていて、ある菌を異なる環境におくと異なる形態の子のう殻を作るようなことはありません。ただし、環境によって、子のう殻を作る/作らないが決まる場合はあります。「閉子嚢殻はどうやって子のう胞子を飛散させるのか?」とのご質問を戴きました。閉子のう殻は、割れることで内部の子のう胞子を飛散させます。
休眠後、胞子が発芽するのは何がシグナルになるのか?
水分、日長、温度、宿主植物由来の物質等がシグナルになるとされます。
イネばか苗病菌は自らジベレリンを産生するのか?植物に賛成させるのか?
自ら産生します。すでにご紹介したアブラナ科植物根こぶ病菌は宿主細胞にオーキシンを作らせるとされています。
フザリウム菌はどうして、大型分生子と小型分生子を作るのか?それらの役割分担は?
大型分生子と小型分生子の役割分担は不明です。従って、どうして二種類の分生を作るのかもわかっていません。
Fusarium oxysoirumは宿主範囲の違いによって形態にも違いがあるのか?
見かけ上は差は見られず、宿主範囲(あるいは分化型)を形態によって分類することはできません。
トマト萎凋病菌の宿主特異性はCh14のような小型染色体で決定されるのか?
Ch14はトマトへの病原性と、トマト萎凋病菌内のレース分化に関わることが報告されています。「染色体の水平移動の仕組みは?」というご質問を戴きました。明確になっているわけではありませんが、菌糸融合によって転移していくことが実証されています。
病原に汚染された種子を使用することで土壌が汚染されることはないのか?
あると考えています。汚染種子を栽培し、個体が罹病すると、そこに形成される胞子、菌核、菌糸などが落下あるいは残渣とともに土壌に残り、伝染源になる可能性が高いからです。
緑かび(青かび)病菌が潜在感染しているカンキツを摂取しても健康被害はないのか?
潜在感染している状況は、ほぼ菌が増殖していませんので、毒素なども殆ど生産されないため、恐れる必要はないと考えます。「緑かび(青かび)病菌を収穫後に感染させることはできるのか?」とのご質問も戴きました。傷をつけて接種すると簡単に感染します。
質問と回答
灰星病菌の寄主範囲は?
いわゆる盤菌類のうち、灰星病菌はバラ科の核果類(モモ、ウメ、オウトウ等)に限って寄生することは報告されています。
灰星病菌に感染した果実がミイラ果になるのはなぜか?
菌が果肉(中果皮)から水分を吸収する結果と考えられます。ミイラ果の表面には良く菌核が形成され、これが越冬、翌年の伝染源になります。。
日本で製造されている貴腐ワインには灰色かび病菌が関与しないのか?
関与しています。気温が低い環境でブドウ果実に灰色かび病菌が感染することで果実が腐敗せずに干ブドウ状になったものを原料に醸造したものです。条件が整わないと使用できる状況にならないため、「貴腐」と呼ばれます。「灰色かび病菌に感染したイチゴ果実は貴腐ブドウのように甘くなるのか?」というご質問を戴きました。通常は腐敗してしまうため、甘くなるような状況にはなりません。
宿主特異的毒素についてもう少し詳しく知りたい?
新年になってから再度ご紹介いたします。
うどんこ病菌が細胞内に吸器を挿入した際に、植物は防御反応を起こさないのか?
場合によって防御反応を起こします。新年になってからご紹介いたします。
うどんこ病菌は多くの植物に発生するが、「多犯性」なのか、それとも、「寄主特異性の高いものがたくさんあるのか」?
後者です。
質問と回答
細菌の細胞外構造として紹介された「せんもう」は「繊毛」か、「線毛」か?
「線毛」です。「線毛と鞭毛の構造は異なるのか?」とのご質問をいただきました。基本的に異なる遺伝子(群)にコードされていますが、膜タンパク質など複数のタンパク質から構成されており、鞭毛が変化してできたとされています。「タイプIII分泌機構は病原性と関係あるのか?」とのご質問もいただきました。病原性と関連しており、エフェクターの注入などに使われます。1月の抗議の中でもう少し詳しくご紹介する予定です。
リンゴ火傷病菌のように日本への持ち込みが禁止されている病原菌はあるか?
植物防疫法によって、基本的にすべての植物病原(菌、細菌等)の持ち込みが禁止されています。植物病原にあたらない微生物は対象でありません。また、植物病原が感染、付着している可能性のあるすべての植物体、土壌の持ち込みが禁止されています。特に侵入が警戒されている病害については、植物防疫所のホームページ(http://www.maff.go.jp/pps/index.html)の「植物検疫ギャラリー」>「侵入を警戒している主な病害虫」をご覧ください。火傷病も掲載されています。
火傷病に抵抗性のリンゴやナシの品種はないのか?
火傷病の防除法については、佐々木・島根(2007)果樹研報6:1-9(http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/naro-se/fruit6_01.pdf)をご参照ください。最後の考察のところに、現在抵抗性品種の育種が進められている旨言及されています。
軟腐病にかかるとなぜ悪臭がでるのか?
軟腐病菌が分泌するタンパク質分解酵素でタンパク質が分解されるため悪臭を発するとされています。
非病原性エルビニアと軟腐病菌の分泌するクオルモンは異なるのか?
興味深いご質問です。探しましたがデータが見つかりません。なお、非病原性エルビニアは、バクテリオシンと呼ばれる、同種の細菌の生育を阻害する毒素を分泌することで軟腐病菌の増殖を抑えることが知られており、これも生物防除の作用機作とされています。。
質問と回答
植物防疫所が日本から出て行かないようにしている病害などはあるのか?
基本的に農林水産省の植物防疫所は日本国内に病害虫が侵入しないようにすることを重視しているようです。というのも、各国に防疫所に相当する機関があり、また、国によって病害虫の重要性などが異なりますから、出さないようにするよりも入らないようにするほうが効率的ということなのではないでしょうか。ただし、輸出時に相手国の要求に応えるための検疫措置のシステムもあり、ほ場から、輸出する産品まで検査し、検疫証明書(sanitary certificate)をつける場合があります。http://www.maff.go.jp/pps/j/introduction/export/を参照してください。
イネもみ枯細菌病に感染したもみの穂はなぜ立つのか?
内部が充実しないためです。「もみ枯細菌病が箱育苗の普及とともに広がったのはわかるが、病原はどこからくるのか?」とのご質問もいただきました。もみ枯細菌病菌はもみ、すなわち種子について伝染しますので、苗箱に蒔いた種子から伝染を開始します。
萎凋病に罹ったトマトが黄化するのに、なぜ青枯病では黄化しないのか?
詳しくはわかっていませんが、萎凋病菌が出すフザリン酸などの毒素で葉緑体がダメージを受けて黄化するとされています。これに対し、青枯病の場合は病原細菌が黄化毒素を分泌しないこと、急速に維管束が閉塞されることから緑のまま萎れるとされています。
イネ白葉枯病は本田でも広がるのか?
広がります。雨滴などでイネの葉に到達し、水孔から感染するとされています。
ハローはなぜ病斑のふちがはっきりしないのか?
縁が明瞭でない病斑をハローと呼びます。概ね、毒素が病斑(例えば黄化病斑)の形成に関与しており、周囲に行くにつれて毒素濃度が低下していくため、徐々に病斑(嶺の場合ですと黄化)が見えにくくなるため、縁が明瞭でなくなると理解しています。従って、ハローを形成している病斑を見ると、毒素が病斑形成に関与している可能性を想定します。
土壌燻蒸では全ての生物が死滅すると思うが、その弊害はあるのか?
土壌微生物相が単純化、あるいは数が減少し、土壌の緩衝能が低下することがあります。そのため、そこに病原が侵入すると病害の大発生につながる場合があることが知られています。
「農薬は危険だ」というイメージを取り除くことが植物保護で必要だと感じた
まず、農薬とは「効果があり、安全性が現行基準で確認されたもの(化学物質、微生物など)を、病害などの防除の目的で使用できるように登録したもの」であり、この登録は、「効果がないもの」や「危険なもの」を皆さんが使わないようにすることが目的です。従って、本来は、登録されている農薬は、使い方を誤らなければ「効果があり、安全」です。一方、登録されていないものを病害などの防除の目的で使用することは法律違反である上、効果がないか、安全性が確保されていないということになります。また、たくさん種類がある農薬について「農薬が危険だ」というような一括的な捉え方は科学的ではありません。農工大で植物保護学その他の講義で学ばれた皆さんが、この農薬のことに限らず、科学的な理解を社会に伝えていただけるよう私は期待しています。
質問と回答
ファイトプラズマは生物なのか?
細菌の仲間であるとされていますので生物です。ウイルスのように、その構成成分が宿主植物内で独立に作られ再構成されるようなことは無く、分裂等で増殖すると考えられますので生物として理解されています。「ファイトプラズマの媒介者はヨコバイだけか?」とのご質問も戴きました。他に、カメムシの仲間も媒介者として知られています。いずれも、セミの仲間で、口針を師管に差し込んで吸汁するような昆虫です。
ファイトプラズマによる叢生症状は植物生産にとって害があるのか?
叢生といっても葉が単に増えるような状態ではなく、とても小さな葉がたくさん生じてくるような状態になりますので、生産上大問題です。また、そのような症状を呈す植物は生育が停止あるいは遅れます。
ファイトプラズマは昆虫のだ線で増殖するとのことだが、植物組織内では増殖しないのか?
増殖します。師管内で増殖をします。
センチュウの寄生性のタイプ(内部寄生性、半内部寄生性等)はどのように決まるのか?また有利不利はあるのか?
お答えするのが大変困難なご質問です。大きな問題となる線虫病の病原うち、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ類は内部寄生性、シストセンチュウ類は半内部寄生性で、この2つのタイプが多いと理解されています。ただ、外部寄生性のブドウハリセンチュウの被害も世界的には大きいですから、一概には言い難いですね。「センチュウの口針は何で出来ているのか?」とのご質問を戴きました。タンパク質で構成されています。
マリーゴールドが産生する殺センチュウ性物質を生産する組換え植物をつくればセンチュウ耐性になるのでは?
考え方としては面白いですね。マリーゴールドの出す殺センチュウ物質はテルシニェルとされていますが、これがタンパク質ではないため、簡単に生合成系を植物に導入できるか、テルシニェルに人畜毒性はないか、などの点をクリアする必要があると思います。この他にも、「シストセンチュウの孵化促進物質を作らない組換え体を作ればしすとセンチュウ病は抑えられるのでは?」とのご提案もありました。組換えをしなくても達成可能かもしれませんが、このような物質は他の目的(例えば有用な微生物を引き寄せる等)で使用されていることもありますので、何が起こるか楽しみですね。同様に、「孵化促進物質を分解するような薬剤はつくれないか?」とのご提案もありました。これも興味深いですね。
センチュウに対する抵抗性品種もあるのか?
はい、存在します。これとこの上のご提案がリンクすると研究が進むかもしれません。
植物組織内で植物ウイルスはどうやって広がるのか?
原形質連絡を通り抜けると考えられます。京都大学農学部植物病理学研究室のHPに、植物とウイルスの以降に関する相互作用についての詳しい紹介があります(http://www.plant-pathology.kais.kyoto-u.ac.jp/virus_2.html)のでご参照ください。ウイスルは種類によって、あるいは宿主植物との関係によって、全身に拡大したり、局所にとどまったりします。モザイク症状が生じるのは、ウイルスの増殖量が多い細胞とそうでない細胞が生じるためです。
質問と回答
気孔や水孔はどのように物理的障壁になるのか?
気孔や水孔を閉鎖することがひとつの物理的障壁になります。
HSTの受容体を欠如した品種では、欠如することによる影響はないのか?
場合によってはあります。例えば、トウモロコシごま葉枯病菌が生産するT毒素が結合する受容体はミトコンドリアの膜上にあり、その性質を持つものは雄性不稔になります。このようにHSTの受容体の変化(或いは有無)によって、毒素受容以外の性状が変化することもあります。
植物には多種類な抵抗性が存在するが、1種の植物が1種の病原に対してもつものは1種類だけなのか?
病原(あるいは微生物)と植物の組み合わせ、あるいは環境条件等によって、機能する(あるいは、逆に、機能しない)抵抗性の組合せが異なる場合があります。
パピラはどのようにして病原の進展を止めるのか?
病原が吸器などを植物細胞に挿入した場合、その吸器挿入部位で植物細胞の細胞膜は貫入し、吸器は植物細胞の細胞膜に包まれた状態になります。この膜の内側(植物細胞側)に、カロースやフェノール類を含むパピラが形成されます。パピラは病原のそれ以上の進展を妨げる物理的防御壁であると理解されています。「リグニン化は病原が侵入した細胞で起きるのか、周囲の細胞で起きるのか?」とのご質問もいただきました。菌糸が進展していく速度より早く、周囲の細胞でリグニン化が起こると、進展に対する防御壁になります。
ファイトアレキシンは植物体の全身でつくられるのか?
ファイトアレキシンは病原等の進展を止めることを目的として生産されます。従って、感染部位の周囲で生産される場合が多いです。ただし、黒斑病菌が感染したサツマイモの根塊では、時間が経過すると根塊全体に水溶性のイポメアマロンが広がります。
ファイトアレキシンは動物毒性があるのか?
ファイトアレキシンは外敵の侵入を防ぐためにされます。外敵としては、菌類、細菌類などの微生物に加え、昆虫などの動物類も含まれます。ファイトアレキシンは多様で、植物種によって異なる上、1種の植物も複数種類のファイトアレキシンを産生します。その多様なファイトアレキシンは抗菌活性の他、昆虫や動物に対する多様な毒性を保つ場合があります。一方で、ファイトアレキシンの中には食べると体に良いとされるものもあります(例:レスベラトロール)。
PR-タンパク質とファイトアレキシンの違いは何か?
PR-タンパク質は、外敵を認識した後に後天的に植物組織で生産される抵抗性に関わるタンパク質であり、ファイトアレキシンは、外敵を認識した後につくられる主に低分子の二次代謝産物を言います。「PR-タンパク質にもそれを産生した植物を食べた場合に人間に影響のあるものがあるか?」とのご質問を戴きました。PR-タンパク質の中にはアレルゲンが知られています。従って、病原に感染するばかりでなく、ストレスのかかる栽培法をとった時に生産物の中にPR-タンパク質が蓄積し、アレルゲンがぞうかするという報告があります。
植物が病害に抵抗性になることで植物にマイナス面はないのか?
生育が遅れる、あるいは停止するなどの場合があることが知られています。次回の講義でご紹介する予定です。
「ムシラージ」とは何か?
説明不足で申し訳ありません。接着物質のことを言いますが、講義でご紹介したのは、イネいもち病菌の分生子や付着器がイネ葉面に接着する際に必要な多糖からなる接着物質です。
質問と回答
植物は微生物をどのように認識しているのか?
主に微生物の表面に存在する、あるいは分泌する多糖、タンパク質、糖タンパク質などが植物に認識されます。植物の細胞膜に存在する、あるいは細胞内のレセプターにこれらの物質が結合されることで微生物の存在を植物は認識するとされています。
HSTを生産しない菌はどこでどのように生息できるのか?
HST非生産菌をAL毒素とともにトマトに接種すると、AL毒素無しでは見られないトマト組織でのHST非生産菌の進展が見られる、というような現象から、AL毒素をはじめとするHSTには宿主の微生物受容化の機能があると考えられます。この場合、HST非生産菌はそもそも植物病原菌である必要はありません。
非病原力遺伝子を持たないレースが対応する抵抗性品種に感染できるのは、植物が抵抗性を発動しないからか?菌が植物の抵抗性を抑制するからか?
この場合は、植物が抵抗性を発動しないから、と考えられます。なぜなら、病原が持っている1つの非病原力遺伝子を破壊(ゲノム上から取り除くこと)することによって、それまで感染することができなかった抵抗性品種に対する病原性を獲得するためです。「植物は非病原力因子でなく病原力因子を認識できないのか?」とのご質問も戴きました。素晴らしいご質問です。病原力因子を認識できる方が良いですよね。実際、植物が病原の持つ病原力因子を認識して、抵抗性を発動できるようになると考えられていて、その結果、そもそもの病原力因子が非病原力因子に転落すると理解されています。
耐性菌はもともといるのか、それとも変異して生じるのか?
両方共考えられます。もともと薬剤に感受性が異なるものがいて、薬剤の繰り返し利用などによって選抜される、あるいは、新たに変異して生じたものが選抜されることで、耐性菌の割合が増えていくと考えられています。「薬剤の使用をやめると耐性菌は減るのか?」とのご質問を戴きました。基本的にはその通りです。薬剤の使用をやめると感受性菌もまた増えることができるようになりますので。ただし、感受性菌と耐性菌とでは薬剤を使用しない環境での定着、増殖などの能力に差がある場合があります。これをフィットネスと呼びます。耐性菌の方がフィットネスが低いことが多いようですので、その場合、薬剤の使用を止めると、急速に耐性菌割合が下がることがあります。ただし、遺伝資源としての「耐性」は残っていますので、また薬剤を繰り返し使用するとすみやかに「耐性」に基づく選抜が行われて耐性菌が復活してくることになります。
耐性菌が生じることを考えると殺菌性の薬剤は使わないほうが良いのではないか?
作用メカニズムの異なる薬剤を順番に使用することなどで耐性菌が生じるリスクを減らすことができると考えられます。病害による被害は大きいですので、殺菌剤て適確に制御することは大切なのです。
試験は、以下の要領で行いました。
『試験に際しては、1/7の講義で配布するB4用紙(両面使用可)1人1枚を持ち込み可とします。参考書、講義で配布したプリント、ノートなどは持ち込めません。試験前に講義のプリント・ノートおよび参考書を利用して勉強していただき、病原微生物に関する理解(記憶ではない)をしていただきたく思います。従って、細かい語句、名前等の情報については配布したB4用紙をご利用いただき、独自性のある答案をつくっていただくことを期待しています。』
図書館所蔵の教科書・参考書は、皆さんが閲覧できる機会を確保するために、長期間借り出ししないようお願い致します。
なお、成績の評価は、シラバスにもありますように、「授業出席回数(14回が最多)」+「試験評点(86点満点)」で行う予定です。また、授業出席回数が「7」未満の者は試験の成績にかかわらずDと評価します。詳しくは有江へお尋ね下さい。
1/21は30分弱講義を行い、その後60分間で試験を行います。また、1/28は試験の解説を行うとともに、講義(最終回)を行いますので、ご出席下さい。
試験問題と評価のポイント(481 kb pdf)
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