平成24年度
3255 病原微生物学授業情報

Modified: DEc 9 2012

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質問に対する回答など


10月 9日クラス

質問と回答

害虫や寄生植物に関する講義はないのか?
害虫については、「昆虫生物学」や「昆虫生理学」、「天敵微生物学」や「バイオロジカルコントロール」が相当するのではないでしょうか。寄生植物については、講義の設定はないように思います。寄生植物については、宇都宮大学雑草科学研究センター(http://wsc.mine.utsunomiya-u.ac.jp/)米山研究室等をご参照されると良いと思います。

「成長」と「生長」のどちらが正しいのか?
国語辞典などによると、いずれも「人や動植物などが育って大きくなること」の意とされています。しかし、「生長」は字の通り、生まれ育つことを、宗教等では生きながらえること、の意として使用されることもあるようで、生物学では「成長」を使用するケースが多いようです。学術用語を調べる際は、オンライン学術用語集(http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi)が有効です。

農薬によって薬害が生じた場合、農家はどう対応するのか?
講義の後半でご紹介しますが、農薬は、農薬取締法に基づいて登録された病害等防除のための薬剤です。農薬の登録では、成分等だけでなく、対象植物や処理方法、記載注意事項も決められています。農家がこれに従って正しく使用したにもかかわらず薬害が生じた場合は、製造会社や販売会社から補償をうけることができるはずですが、そのようなことはほとんどありません。多くの場合、不適切な農薬の使用による薬害であり、自らその農薬を使用した場合は補償等はありません。

日本で最も多い病害は何か?
お答えするのが困難な質問ですが、我が国の最重要作目はイネですので、イネで最も重要な病害であるイネいもち病が我が国で最重要な病害だといっても良いのではないでしょうか。

植物の生育阻害要因の割合を知りたい?
データがみありません。実際には、かなり概念的な説明であり、「すべての阻害要因がなかった場合」という非現実的な状態を基準とした計算、しかも多くの作目について、様々な作型、様々な地域、毎年の天候などに影響をうけるため、きちんとした数値データがないものと思います。また、例えば、非生物要因と生物要因が複合的に影響する等、現実はさらに複雑なものと思われます。

耕地生態系では自然生態系と比べてなぜ病原と植物の今日進化速度が速いのか?
農地では、同じ種類の植物が優占する状態が繰り返し再現されます。ここにその植物の病原が侵入すると、その数を著しく増やすことができますので、変異等もたくさん蓄積されるようにあります。そこに病原に対して抵抗性の品種等を栽培すると、その抵抗性品種をおかすことのできる変異を有する病原菌が選抜されて、抵抗性品種が罹病化する確率が高かったり、速度が速くなったりすると考えられます。

「理想の収量」や「現実の収量」の具体的数字はないのか?
あくまで概念の説明をしたいと意図していますので、あえて数値は考えないようにしてください。「現実の収量」を「達成可能な収量」まで増やすことが目標になりますが、食料生産の場合、目標は「達成可能な収量」まで収量を増やすことではなく、あくまで、産業としてなりたつ「経済的な収量」まで増やすことになります。ただし、講義でもご紹介したように、「経済的な収量」をできるだけ「達成可能な収量」に近づけることが私たちの仕事であろうと思っています。「経済的な収量の基準は、生産者なのか消費者なのか?」とのご質問をいただきましたが、両方です。生産者が栽培することによって自らが暮らしていくことができることが農業では必要ですし、消費者の需要を満たし、品質や価格でつりあうものが生産できなくてはいけないことになります。

微生物に感染されていても障害がでない場合はあるのか?
全く障害がないかは断定できませんが、障害がないように見えるケースは知られています。植物組織内生微生物が数多く知られています。中には、植物の生育の促進や病害防除に機能するものも知られています。講義の中で一部ご紹介する予定です。

植物病原微生物の研究はどれだけ盛んか?
どうお答えしたら良いかわからないご質問ですが、今後の講義を聴いていただけるとご理解いただけると思います。

健全な植物は少ないのか?
そうかもしれません。からだのどこも調子悪いところのないというヒトも少ないですね、、、。

植物病害によるパンデミックの例はあるのか?
10/16にご紹介する予定です。

植物病害は普通どう治療するのか?
病気にかかった個体を治療するのはかなり困難なことも多いです。植物病害では、もともと発生しないように予防する、病気が発生してしまったた場合は、それが他の個体に広がらないようにする(これを治療と呼ぶのが一般的です)、ことが一般的ですが、いずれも化学農薬を使用するのが最も普遍的です。

ファイトプラズマとマイコプラズマはどうちがうのか?
「細菌」のところでご紹介します。

プリントにあった小テストはどうしたらよいのか?
10/16に説明します。


10月16日クラス

質問と回答

コッホの原則で、「単離できない病原」はどのように病原であることを確認するのか?
培養できない菌・細菌やウイルス等が相当します。うどんこ病菌のように培養できない菌では、その胞子を採取して健全な植物体に接種することを行います。培養できない細菌やウイルスでは、接ぎ木で健全な植物に接種して病徴が出るかの試験を行います。また、ウイルスでは、他種の植物で増やした後に元の宿主植物に接種することもあります。

コッホの原則の4番目の試験項目を行わない場合がある理由は?
4番目の試験項目(原病徴を再現した植物体からの病原の再分離)を行うことは望ましいです。ただし、3番目の項目(接種試験)で、病原と目される微生物を接種した植物で病徴が再現され、接種しない対照区で病徴が出なかった場合、病徴は接種した微生物によることが示されていることになりますので、4番目の項目を省略する場合もあります。特に、上記のような単離できない病原の場合はそれが普遍的です。

培養できないと考えられてきた微生物が培養できる様になった例はあるのか?
植物病原では、それまで分離できないと考えられてきたさび病菌の中に培養できるものが見いだされた例があります。これは培地の工夫等の結果です。

植物組織の共生者はすべて絶対寄生性か?
共生者と考えられている微生物にも絶対寄生性でないもの、言い換えれば培養可能なものが数多く報告されています。ただし、共生の究極の姿は、細胞内共生など絶対寄生性であると考えられています。

共生者は植物にどのような影響を及ぼすのか?
概ね影響が見えない、特に障害のような影響が見えないものを共生者と言うことが多いようです。しかし、共生の結果、植物の生育促進、生育抑制、様々なストレス(温度、乾燥、病害等)に対する耐性の獲得、等の影響がある場合が報告されています。

ダイズで数多くの病原の報告がある図が示されていたがこのような病原は同時に感染するものか?
提示した図は、これまで報告のある病原を示す図です。従って必ずしも複数の病原が同時に感染する訳ではありません。ただし、複数の病気が同時に発生して病徴が激しくなる場合もしられています。「病原がついていても病徴がでない場合もあるのか?」とのご質問をいただきました。そのような場合もあります。例えば、病原が表面についている(汚染)が、感染していない場合は病徴は現れません。感染していても病徴がでない場合(無病徴感染)もあります。野菜類の軟腐病の各論でもご紹介します。

垂直伝搬だけしかしない病原は存在するのか?
数を増やし、かつ後代をつくるという生物の本質的な方向性で考えると、病原も数を増やすための水平伝搬を行うことが普通であろうと考えられます。水平伝搬が知られていない病原の心当たりはありませんが、ナシ赤星病菌では、異種に寄生する(=いわば垂直伝搬)際に数も増やすように胞子を飛散させますが、同種から同種へは拡大しませんので、水平伝搬がないといっても良いでしょうか?ナシ赤星病菌の生活環は、11/6にご紹介する予定です。

種子を通じて病原が垂直伝搬する例は多いのか?
大変多く、植物病害防除の観点からは大変重要な伝搬手段であると考えられます。11/6にコムギの裸黒穂病菌、11/20にイネばか苗病菌を例にご紹介する予定です。「TPPが締結される様になると、種子検疫等はどうなるのか?」とのご質問もいただきました。科学だけで決まらない部分が多いとは思いますが、侵入が真に懸念される病原等については検疫の厳しさをかえることはできないと思います。種苗伝染性病原の場合ももちろんそうですが、これは国内外産を問わず汚染を防がなくてはなりません。もしかすると影響してくるのは、国内でも国外でも普遍的な病害虫への対応で、実際、EUでは、多くの病原の輸入の許可が不要になっています。その他、不完全障壁とされている病害虫の検疫については、きちんと科学的重要性を証明することが求められるようになるでしょう。

「かび」や「きのこ」の形はどのように決定されるのか?
まだ完全な機構はわかっていませんが、ウシグソヒトヨタケや麹菌、アカパンカビ等で研究が進められており、cAMP経路、MAPキナーゼ経路等様々なシグナル伝達系が関与していることが報告されつつあります。環境条件も影響を及ぼします。

もともと「菌」とされていたものが他の分類群になっているとのことだが具体的には?
10/23にご紹介する予定です。

専門用語の英語は和訳してほしい
申し訳ありません。できるだけ和訳しているつもりですが、さらに気をつけるようにします。


10月23日クラス

質問と回答

菌の分類体系はなぜ変遷してきているのか?
菌に限らず生物の分類体系は常に変遷していると考えたらよいと思います。菌についていえば、もともとは形態(胞子など)を基準に分類体系が築かれてきていますが、形態が類似していても系統が離れている場合もあること(想定されていましたが)が、分子系統解析などによって明らかになったため、分類体系を修正してきた経緯があります、

菌の学名は完全世代に統一する方が便利だと思うが、なぜ先についた名前が優先されることになったのか?
菌の場合、いわゆる不完全世代名しか持たない菌がいるという特殊な事情のため、複雑なことになりました。植物ではそのようなことはありませんから、先に学名をつけて人の権利を保持するためにも先名権が重要になります。ところで、菌の学名を完全世代に統一すると、完全世代名を有していない菌(たとえば、Fusarium oxysporum)などが困りますね。

原核生物の分子分類はどの領域を対象に行うのか?
16S rRNAを対象にすることが一般的です。

同一の遺伝子セットをもつクローン同士が有性生殖を行っても後代には多様性は生まれないのでは?
まずは、有性生殖は一遺伝子(交配型遺伝子)に支配される交配型の異なる菌株間でおこりますので、クローン同士は有性生殖しません。ただし、交配型遺伝子のみ入れ替えて、ほかの遺伝子セットはすべて同じ菌を交配させることは可能で、この場合、後代は、交配型が1:1に分離する以外は性状に多様性は生じません。

菌の雄雌はどのように決まるか?
基本的に菌は雌雄同体で、細胞がフェロモンを認識して雄または雌の細胞として機能します。講義でお見せしたスライドで、例えば、アルビノ株と通常株の交配で、子のう殻がアルビノになっている部分ではアルビノ株が雌として機能しています。

自然界、実験室ではどの程度の頻度で交配するのか?
頻度をお答えできるだけの情報がありませんが、ご理解いただきたいのは、交配するかしないかは環境条件に影響されることです。

菌の菌糸融合、擬有性生殖がよく理解できない?
10/29に再度ご説明します。


10月30日クラス

質問と回答

病害が発生したほ場では、翌作はほかの種類の植物を植えた方が良いのか?それとも防除して同じ植物を植えるのか?
どちらの対応をする場合もあります。病害に対して抵抗性の品種に変更する、病害抵抗性台木を使用する等の対応をする場合もありますし、可能な場合は作目の変更をすることもあります。一方、農薬等を使って病害防除を行い、同じ種類の植物を栽培することもあります。「どちらが良いのか?」は、ほ場ごとの様々な条件が影響してきますので一義的に決めることはできません。

菌の交配時に機能するフェロモンはどのような物質か?
ペプチドフェロモンが機能します。

雌雄同体で自家和合性の菌は存在するのか?
存在します。いわゆる「ホモタリック」と呼ばれる交配挙動をとる菌で、そのような交配が認められます。ただし、講義でご紹介した1組2種類の交配型遺伝子の両方をゲノム上にもっていたりしますので、実際には1つずつの細胞が、異なる交配型の細胞として機能している可能性も高いとされています。

擬有性生殖をする菌のゲノムサイズは小さいのか?
菌のゲノムサイズは概ね40-60 Mbpです。擬有性生殖をするかどうかとあまり関係はないと考えられます。

菌糸の先端成長はどのようにおこっているのか?
菌糸の先端で、細胞壁や細胞膜をいったん代謝してあらたに新生することによって伸長するとされています。

菌糸の伸長に際して、走性がみられる場合があるか?
植物の根部で共生関係を築く菌根菌などで、胞子の発芽や菌糸の伸長に、植物が分泌するラクトン類が影響するという報告があります。菌糸の走化性の例として知られています。

菌核は菌糸の塊と理解してよいか?
その通りです。「菌核は胞子ではないのか?」というご質問もいただきました。「胞子」は、1つまたは少数の複数細胞からなる球状あるいはそれに類する形状で、菌糸等を伸長して増殖に関わるもの、をいいます。菌核は、菌糸がからみあったもので、肉眼でも可視なものがおおいです。

Plasmodiophora brassicaeの休眠胞子発芽条件を知りたい
植物の浸出液や土壌の抽出液が存在すると発芽しやすいようです。「生活環中の点線は何か?」とのご質問をいただきましたが、講義でもご紹介したように、まだ未知の部分を点線で示しています。

カブは根こぶにかかっても商品価値はあるのでは?
ありません。カブでも不定形のこぶができてしまい、また、腐敗しやすくなりますので、商品にはなりません。

根こぶが発生したほ場はどうするのか?
ハクサイやキャベツの畑は通常、露地ですので、レタス等に転換することが多いです。その他、農薬の施用や石灰(アルカリ性にする)の施用、水はけの改善などの対応をすることが多いようです。


11月 6日クラス

質問と回答

なぜすべての菌は遊走子を持たないのか?
遊走子(鞭毛を持つ胞子)をもつことによって、水中での移動、拡大に有利に働くこともありますが、空気伝搬には遊走子は不向きである、かつ、遊走子は生残性が低いなどのマイナス面もあります。そのため、菌の多くは遊走子を持たないのであろうと考えます。

アブラナ科植物根こぶ病用に使用されていたPCNBのように、後日問題が生じたり、農薬登録がなくなった農薬はあるのか?
すべての農薬は、農薬登録の有効期間があり、再度農薬登録の更新をしなくてはなりません。この更新をしない農薬は失効し、以降、製造、販売、使用等できなくなります。農薬登録の更新を行わない理由は経済的など様々ですが、中には、当初判明していなかった問題(薬害、他の生物への影響、残留、代謝産物の毒性や匂い、等)が理由の場合もあります。

ジャガイモ疫病菌は野外では交配しにくいとのことだが、どうやって圃場で大発生するのか?
生活環の図を御覧ください。ジャガイモ疫病菌は、遊走子嚢(sporangium)が直接発芽(この場合、遊走子嚢は分生子として機能)したり、遊走子嚢から遊走子が放出されて、雨滴などで水平伝搬します。これが大発生につながります。もし野外で交配をしていたとしても、多様性を維持するのに機能するでしょうが、大発生にはつながらないと思われます。

イネ苗立枯で、Pythiumは比較的低温、Mucorは高温を好むと、防除法はないのでは?
種子消毒を行い無病種子を使用する、病原菌のいない土を使う、湿度を制御するなどで対処することになります。

生活環が菌によって異なり、興味深いが、覚えられない
様々な病原の生活環をご紹介しているのは、その特徴を理解していただき、病原性との関連などを考察いただくこと、また、防除のポイントを考えていただくことなどを目的にしています。生活環をすべて覚えて戴く必要はありません。定期試験は昨年までと同様に、一部持ち込み可にする予定ですので、細かいことは記憶せずに、理解を深めていただければ十分です。

ソラマメ火ぶくれ病菌が絶滅危惧種だとことだがどのうような機能をもつのか?
例えただけで、絶滅危惧種に指定されているわけではありません。ただ、植物病原菌は生きた植物で生活し、栄養を得るという機能を持っていることをご理解ください。そ「ソラマメ火ぶくれ病はどこでも発生するのか?」、というご質問もいただきました。土壌に感染植物体などをすきこんで種子を蒔くと、研究室の温室でも発病させることができます。

レタスビックベイン病の病原ウイルスはLBVaVかMiLBか?
当初、レタスビッグベインウイルス(Lettus big-vein virus, LBVV)が病原として報告(Kuwata, 1983)されましたが、その後、ミラフィオリレタスウイルス(Mirafiori lettuce virus, MiLV)が主な病原であると考えられるようになり、現在では、LBVVは付随するウイルスであると考えられ、名前もLBVaV(Lettus big-vein assiciated virus)と変更されました。(以下、11月18日追加)桑田茂博士(明治大学教授)からの情報によると、LBVV、 MiLVとも、Olpidiumの細胞内に入り込んでおり、植物残渣の中でOlpidiumとともに長期間感染性を持つそうです。また、LBVVおよびMiLVは、実験室では、Olpidiumが不在でも、汁液接種で健全な植物に接種可能だそうです。

不完全菌の生活環はどのようにして知るのか?
ご質問は、不完全菌の場合、生活環の一部が不明になるのでは?ということだと思います。不完全菌については、子嚢菌のところで改めてご紹介しますが、通常、不完全世代だけで生活環を全うしているため、不明な部分はないとご理解ください。


11月13日クラス

質問と回答

子嚢胞子等の有性胞子による増殖は有性生殖か?
違います。有性胞子を作る過程が有性生殖です。有性生殖の結果形成される子嚢胞子等の胞子は、すでに核相nで、これが発芽したり、分生子を作ったりしてもクローナルに無性増殖しているに過ぎません。「有性胞子」という名前自体がわかりにくいですね。

病原の宿主選択になにか理由はあるのか?
大変難しいご質問です。微生物は通常生きた植物から栄養をとることができませんが、何らかの手段で、ある範囲の植物から栄養を得ることができるようになった結果を宿主範囲として我々が認識していることになります。この「何らかの手段」は大変多様ですし、また、「ある範囲」も大変多様です。これらの組み合わせですので、大変多様な病気がそんざいすることになるのでしょう。

さび病菌の「冬胞子」と「担子器」は同じか?
生活環の図を御覧ください。冬胞子が発芽するような形ででているのが担子器で、担子器の上に、担子胞子が形成されます。

さび病菌が宿主交代をする利点は?
過去の「質問に対する回答」を御参照ください。

さび病菌が様々な胞子を作ったり、飛ばしたりするきっかけになるのはどのような条件か?
菌の形態形成には、光、温度、水分、物質(特に植物病原菌の場合は植物組織の物質変化など)、など様々な要因が影響しています。さび病菌でも、このような条件が多様な胞子の形成の条件になっていると考えられますが、研究例を知りません。調べてみます。

黒穂病菌をたべても大丈夫なのか?
講義でご紹介したように、メキシコでは、裸黒穂病に感染したトウモロコシを食べますが、特にマイコトキシン(詳しくは子嚢菌のところでご紹介します)の産生については興味が持たれます。関連の複数の論文があり、マイコトキシン検出例も報告されていますが、裸黒穂病に感染したトウモロコシから検出されるマイコトキシンの多くは、二次的に感染(あるいは汚染)した他の菌の産物であると考えられています。「麦類の裸黒穂病」は食用に適さないのか?」とのご質問をいただきましたが、食べると危険かどうか、ということとは別に食用にしないようです。我が国では、トウモロコシの裸黒穂病も通常は食用にしません。

種子伝染は病原にとってどのような意味があるのか?
宿主といっしょに耐久している状態ですので、垂直伝搬によって次世代を作ることができること、また、宿主がすぐそばにいることは有利であると考えます。「種子を生かしたまま菌だけを殺すことはできないのか?」とのご質問をいただきました。化学物質(農薬)や熱を利用した種子消毒という方法があります。イネばか苗病の各論で詳しくご紹介する予定です。

イネ紋枯病はヒトがイネを栽培するようになった後に生じたのか?
もともとイネ紋枯病菌は存在したのだと思いますが、あまり重要な病原でなかった、あるいは、異なる感染方法がメインだったのではないでしょうか。イネ紋枯病菌の菌核は水面に浮きますので、水田栽培が始まってから水面に浮いて感染を広げるという形での感染、発病が顕在化したのでしょう。


11/20以降の講義の「質問と回答」はこちらをご覧下さい。


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