質問とご意見に対する返答
5月21日クラス
質問と返答
細胞内共生説を支持する証拠についてもっと知りたい
細胞内共生説とは、「真核細胞が原核細胞に原核細胞が共生することでできた、言い換えると、真核細胞の細胞小器官は過去に共生してきた原核細胞に由来する」、ということです。この根拠の一つとして、細胞小器官が2重膜に包まれており、その外膜(の脂肪酸組成など)が細胞の細胞膜に類似していること、内膜は類似していないことを講義で紹介しました。この他にも小器官が自立的に増殖するなどの根拠があげられています。詳しくは、参考書や http://www.bio.nagoya-u.ac.jp:8001/~hori/asahihyakka06.html を初めとするインターネットHPをご参照ください。
「選択的」という言葉がわからない
ご質問は、「選択的透過性」に関するものの様です。選択的透過性は、細胞膜が持つ性質で、たくさんある様々な物質のうち、特定のものを選んで膜の外側から内側へ、あるいはその逆方向へ運ぶ性質を示します。「選択的」という言葉は、生物学などでは多用される言葉で、英語ではselectiveに相当します。
「生きた細胞膜」とはどういう意味か
説明が悪かったようです。「生きた細胞の細胞膜」としてください。この「生きている」ということは、生体エネルギーを供給できるという意味であると理解してください。そこで、基本的にはエネルギーを要求する輸送系である能動輸送でその細胞が生きている必要があります。
「チャネル」とは何か
2002年のクラスの質問と返答をご覧ください。
ATP依存型膜輸送タンパク質でATPはどのように分解されるのか?
ATPはATPアーゼという酵素によって末端のリン酸基が加水分解によってはずされてADPになります。この過程でエネルギーを放出します。
DNA、ゲノム、遺伝子の違いを説明して欲しい
次回ご紹介する予定です。
授業全般に対するご意見について
プリントの図、パワーポイントの図の文字が見にくいものがある→改善を試みます。パワーポイントでは、読み込んだ図をお見せしているので、文字を大きくすることはなかなか困難ですが、出来るだけ対処します。また、講義でも出典をお知らせしていますので、原本を見て頂くとわかりやすいと思います。またご意見をいただけるようお願いします。
5月24日クラス
質問と返答
食胞とは何か?
細胞が大きなサイズの物質を細胞内に取り込み、消化するために形成する膜につつまれた球状の器官です。膜が細胞質に陥入し、その部分に物質を取り込んだ後、くびれることで形成されます(エンドサイトーシス)。この胞の中で、酵素によって物質は消化されます。アメーバやゾウリムシなどのほか、白血球の一種である好中球など特異な細胞にも見られます。
細胞内小器官の、「ゴルジ体」と「小胞体」はつながっているとのことであるが、構造に違いはあるのか?
これらの小器官はつながっていること、一重の膜につつまれていることなどから、かなり類似した膜構造をもちます。しかしながら、小胞体はリボソームを結合しタンパク合成の場を提供する場合があること、そのタンパク質を取り込み、輸送すること、一方、ゴルジ体は輸送されてきたタンパク質を修飾し、成熟度の高いタンパク質(酵素など)とし、さらにゴルジ体の一部が切れてできるゴルジ小胞にそのタンパク質を含んで輸送し、細胞外に分泌するなど、機能の分化をしています。それにともなって、小胞体はかなり大きな板状構造をとりリボゾームと結合している部分があること、ゴルジ体はやや小さな板状構造が複数かさなり、内部に酵素などを多く含み、さらに小胞を分ける、などの構造の違いが見られます。
核ラミナとは何か?
核膜の内側に存在する中間径フィラメント(細胞骨格でご紹介しました)が網目状になったもので、主に核の形状を保つ、染色体を結合し配置する役割を持っていると考えられています。
DNAとRNAの機能の差を知りたい
次週ご紹介する予定です。テキストなどをご参考に、予習して頂いておくと、より理解しやすいと思います。
細胞が死ぬと染色体や遺伝情報はどうなるか?また、逆に染色体が無くなると細胞はどうなるか?
細胞が死ぬと染色体などの生物的構造は次第に破壊されますが、染色体の本体であるDNAはかなり安定ですので物質的には残ります。そのため、過去の標本などからDNAを抽出して生物の系統や進化の解析に使用できます。染色体にはDNAが含まれており、このDNAは講義でもご紹介したように細胞の生命活動を司りますので、基本的には染色体が失われた細胞は死ぬことになります。
ゲノムの解析はどのように行うのか?
基本的には、ある生物種の細胞が持つ1組の染色体にふくまれるDNA分子のすべての塩基配列を決定することで行われます。これはDNAの断片を得て、シーケンサーという装置を用いて行う過程です。しかし、重要なのは、そのDNAの塩基配列が、どのような遺伝子情報を持っているかを解析することで、先ずは、どんな遺伝子が含まれているか、過去の知見を参考にコンピューターを駆使して解析します。ゲノム解析に係わる情報はインターネット上で多数ありますので、調べてみてください。
6月 7日クラス
質問と返答
染色体DNAの情報からタンパク質をつくる過程(セントラルドグマ)に関する質問を多数いただきました
プリントおよび講義の中でご紹介したホームページをご参考に、復習してみてください。殆どのご質問はそれで解決すると思います。次回の授業の最初で、もう一度簡単にこの過程についておさらいしますが、それでも分からない点が有る場合は改めてご質問ください。戴いた質問のうち、基本的と考えられる幾つかについて以下でお答えします。「DNAとヌクレオチドはどう違うのか」ー片山先生の講義、本日の講義でもご紹介しているように、DNAの構成ユニットがヌクレオチドです。言い換えれば、ヌクレオチドが複数つながることでDNA分子となります。「’エキソン’と’エクソン’は違うのか?」ー同じです。元々日本語ではありませんので。「転写とは何か」ープリント3頁目をごらんください。染色体DNAからRNAへ遺伝情報をすることです。「RNAポリメラーゼはどこから来るのか?」ー初期の転写に必要なRNAポリメラーゼはDNAとともに親の細胞からタンパク質の形で遺伝されているそうです。その後は染色体上の情報を元にRNAポリメラーゼが造られるようになり、親細胞由来のポリメラーゼは時間の経過とともに消化されます。「転写回数に限界はあるのか」ー各遺伝子の転写は調節領域で制御されている場合が多いので、遺伝子によって転写の頻度や回数は異なっています。細胞が生きている限り転写回数には制限は無いと考えてください。「タンパク質が合成された後、mRNAはどうなるのか」ーその処理もきちんと調節されており、不要なmRNAは分解されます。
6月14日クラス
質問と返答
染色体の形や大きさはどのように決まるか?
講義の板書で書いた染色体の大きさや色は、模式図ですので、実際とは異なります。区別しやすくするために長さを変えたもの、加えて色を付けた訳です。実際には、染色体の大きさはDNA分子のサイズ(塩基対の数)によって決まりますし、色もありません。また、細胞分裂周期における時期によって染色体の形も変わります。染色体が凝集している分裂中期から終期で観察し安くなります(配布プリントのP.4の写真を参考にしてください)。
細胞分裂におけるDNA量の変化の図は何を意味するのか?br>
図は、核あたりおよび染色体あたりのDNA量を示しています。この図から、いつDNAが複製されたか、いつ核分裂したかがわかります。両者のDNA量の変化(減少)にタイムラグがあることから、染色分体の分離・分配が核分裂に先だって起こることがわかります。また、減数分裂の結果、染色体1つあたりのDNA量は変化しませんが、核あたりのDNA量が1/2になっていることが分かります。
2n=46のnは何を意味するのか?
相同染色体の組数です。
細胞分裂の度になぜテロメアは短くなるのか?
昨年も同様な質問をいただきました。昨年の回答をそのまま転載します。講義でもご紹介したように、DNA複製において、リーディング鎖では5'→3'方向で連続的に新しい鎖がつくられますが、ラギング鎖では、短いフラグメント(岡崎フラグメント)が複数形成され、これが後で結合して新しい鎖ができます(詳しくは、プリントおよび「遺伝子の部屋」などをご参照ください)。染色体の末端のテロメア領域で複製が起こるとき、その5'端のRNAプライマーがDNAに置き換えられないため、その部分が2本鎖を形成できず、切断されます。その結果テロメアはだんだん短くなります。詳しくは、http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/labs/fish/cancer/genomeOS/Go-4.html などをご覧ください。
無性生殖ばかりで増殖していると、テロメアがどんどん短くなって死んでしまうのでは?
理論的にはその通りです。そこが、クローン動物で心配されている点です。ただし、無性生殖のみを行う生物は稀で、無性生殖をおこなうとされている生物のうち多くは有性生殖をする手段をもってはいるが、通常は個体数を急速に増加させられる無性生殖をおこなっているものです。無性生殖のみを行う生物がテロメアの修復機構を持ち、それが機能しているのか残念ながら私は情報を持っていません。
無性生殖で増える生物のDNAを変更すると有性生殖して新種ができるのでは?
前の質問でお答えしたように、無性生殖を行える生物も一般に有性生殖能をもっています。どちらを行うのかは、遺伝子発現の調節などによってきまります。言い換えれば、無性生殖で増える多くの生物は有性生殖を行うのに必要な遺伝子(DNA)を保持しています。ただ、それを発現せず、無性生殖に特有な遺伝子群を発現している場合に無性生殖が繰り返されます。菌類におけるこの調節について私どもの研究室では研究を行っていますので、ご興味が有るようでしたら、研究室をご訪問ください。また、たとえ無性生殖で増える生物が有性生殖を行ったとしても、種内での有性生殖になりますので、新種はできません。
6月21日クラス
質問と返答
練習問題の解答例に無いものがある
確認してみましたがどこが無いのか不明です。情報をいただけると幸いです。