東京農工大学野生動物保護学研究室-梶光一教授


《研究の視点》
中大型獣の個体群とその生息地を対象として、生活史、分布と個体数の推定、制限要因と変動パターンの把握、変動要因の解析、生息地利用などの研究を進めていきたいと考えています。寿命の長い大型獣の生態調査には、短期の調査では成果が限定されます。研究者間のネットワークを築くことによって、野外調査の拠点を確保して長期継続できる仕組みをつくります。

《関心分野》

  1. 中大型獣を対象とした分布と個体数の推定法の開発
  2. 個体群の制限要因と変動パターンの把握、変動要因の解析
  3. 生息地利用の把握
  4. 野生動物管理システムの構築
  5. チベット高原のチルーの大規模季節移動のメカニズム解明

《研究暦》
 ① エゾシカの個体群動態に関する研究 

  • エゾシカの個体数変動のプロセスとその要因を探るために、閉鎖性や生息環境の異なる3個体群を対象に15~27年間にわたる長期モニタリングを継続してきました。

 ② エゾシカの空間分布に関する研究

  • 北海道が実施した4回のエゾシカの分布調査結果(1978年、1984年、1991年、2002年)に基づき、地理情報システムを用いて生息適地モデルを作成し、分布の制限要因とそれらの制限要因の経年変化および強弱について明らかにしました。

 ③ エゾシカの個体群管理に関する研究

  • エゾシカの個体群管理手法の検討を行なうと共に、適正密度を科学的に検証するために、密度上昇がシカ自身の体サイズや繁殖、生息地、農作物、牧草地、人工林へ与える影響を調べ、生物学的適正密度や被害許容水準からみた適正密度を提示しました。

 ④統合的な野生動物管理システム構築に関する研究

  • よい野生動物管理の在り方を提案するために、文科省の支援を得て、「統合的な野生動物管理システムの構築」という地域連携プロジェクトを平成21年から3年計画で実施した。本プロジェクトでは異なる社会的な階層の統合、異なる空間スケール(ミクロ・メソ・マクロスケール)の統合、社会科学と生態学を統合することによって、深刻な農業被害をもたらしているイノシシに焦点をあてて、統合的な野生動物管理システムの構築を目指した。

 ⑤その他

  • ヒグマおよびチベット高原、知床の動物に関する研究北海道におけるヒグマの分布、捕獲個体の解析(年齢構成、子連れ率、捕獲時期)などから、春の駆除がヒグマ個体群に大きな影響を与えて、個体数の減少に導くことを予測しました。チベット高原において、ニホンジカの進化を解明するためにクチジロジカなどの有蹄類を中心とする動物群集調査を実施しました。知床半島の野生動物群集保全のための調査を1980年代から開始し、エゾシカなどの長期継続モニタリングの基礎をつくり、生息状況を明らかにしてきました。現在、知床世界自然遺産地域科学委員会委員、エゾシカワーキンググループ座長として生態系管理の一環としてエゾシカの管理計画策定に従事しています。